
ロシア・ウクライナ戦争や中東紛争の長期化に伴い、西側諸国の攻撃及び防御用ミサイルの需要が急増し、ロッキード・マーティンやRTXコーポレーションなど米防衛産業に追い風が吹いている。パトリオット・ミサイル発射システム、THAADミサイル、サイドワインダー・ミサイルなどのグローバル需要増加により、関連事業部の業績改善が見られる。
先月、ロッキード・マーティンは第2四半期の売上が181億6,000万ドル(約2兆6,741億円)に達したと発表した。市場予想(185億7,000万ドル/約2兆7,345億円)を下回ったものの、パトリオット・ミサイルとTHAADミサイルを生産するミサイル・火器部門の売上は前年比11%増加し、好調だった。戦闘機部門(前年比2%増)、宇宙部門(3.5%増)なども業績改善を示した。
一方、ヘリコプター・レーダー部門の売上は前年比12%減の40億ドル(約5,889億8,223万円)にとどまり、全体の業績に影響を与えた。RTXもレイシオン事業部(既存の防衛事業部統合)がパトリオット装備と先進対空ミサイル・システム(NASAMS)の販売増加により、売上が8%増加したと報告した。
米陸軍はロッキード・マーティンにパトリオット・システム用「PAC-3」ミサイルの生産量を4倍に増やすよう要請している。これを受け、同社は今年末に受注残高が過去最高を記録すると予測している。RTXの受注残高は6月末時点で、635億ドル(約9兆3,516億円)に達した。米海軍が使用する「SM-3」ミサイルと「AIM-9X」サイドワインダー・ミサイルの契約によるものだ。
RTXのニール・ミッチルCFO(Neil G. Mitchill)は「需要は非常に持続的だ」と述べ、「これらの製品は非常に複雑で、大半が生産までに長時間を要するため、我々は引き続き投資している」とウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に語った。
米国は過去数年間、太平洋地域で中国との競争に備え、ミサイルを備蓄してきた。しかし、ウクライナや中東での戦闘が長期化するにつれ、西側諸国のミサイル在庫は急速に減少している。戦略国際問題研究所(CSIS)の ウェス・ランボー研究員(Wes Rumbaugh)は「最近の米国産業界に負担をかけたミサイル需要の急増は、かなりの部分が予期せぬ紛争の勃発によるものだ」と述べ、「短期的には非常に強い需要の兆しを示しているが、長期的には(各国政府の)これらの投資が持続可能な資金調達につながるか疑問が残る」と分析した。
実際、ミサイル部門を除けば、米国の防衛産業全般は構造的な困難に直面している。ロッキード・マーティンは第2四半期の業績発表で、当該四半期に総額17億ドル(約2,502億6,434万円)の引当金を計上したと報告した。このうち、戦闘機部門の機密プログラム関連の損失が9億5,000万ドル(約1,398億5,360万円)、ヘリコプタープログラムに関連する2件の引当金が合計6億6,500万ドル(約978億9,752万円)に達した。米空軍の次世代戦闘機関連の損失も6,600万ドル(約97億1,615万円)発生したと伝えられている。
WSJは「航空機製造業者は不安定な受注状況と過剰な研究開発費用に苦しんでおり、造船業界も建造コストの管理に苦慮している」と指摘した。さらに「加えて、ドローン(無人機)戦争は世界各国の軍の現代化の方法に構造的な変化をもたらしている」と付け加えた。
現時点でミサイル需要の増加が世界の防衛産業サプライチェーンにプラスの波及効果をもたらしていると見られている。ノースロップ・グラマンは現在年間1万3,000個の固体ロケットモーター生産量を2029年までに年間2万5,000個に拡大する計画だ。欧州の3大防衛企業BAEシステムズ、エアバス、レオナルド S.p.Aが共同所有するミサイル会社MBDAは、ロシア・ウクライナ戦争以降、受注が急増し、親会社に大きな利益をもたらしている。BAEの受注残高においてMBDAが占める割合は、ウクライナ戦争直前の2021年では6.5%だったが、現在は13%にまで上昇した。
WSJは「ミサイル製造業者は米トランプ政権が推進中の『ゴールデン・ドーム』プロジェクトで再び恩恵を受ける可能性がある」と予測している。米国のドナルド・トランプ大統領は5月、米国史上初めて宇宙を活用したミサイル防衛プロジェクト「ゴールデン・ドーム」の推進計画を発表した。トランプ大統領が任期内に運用可能なシステムを要求しているため、短期間で迎撃ミサイルが生産できるロッキード・マーティンやRTXなどの企業が追加の収益を上げる可能性が高いと説明されている。
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