英国政府が深刻化する若年失業の解消に向け、大規模な雇用プログラムを導入する。18か月以上、就学や就労を行わず、福祉手当を受け取っている若者に対し有給の仕事を提供し、就労を拒否すれば手当削減などの制裁を科す方針だという。

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、レイチェル・リーブス英国財務相は28日(現地時間)、労働党党大会の演説で若者向けの有給雇用提供政策を発表した。対象は、英国の統合社会保障給付制度「ユニバーサル・クレジット」の受給者のうち、18か月以上就労や求職活動にも従事していない若年層となる。政府はこの施策を労働党の「青年保障(Youth Guarantee)」構想の中核と位置づけている。
青年保障構想は18歳から21歳の若者に対し、大学進学、職業訓練、就職のいずれかを保障する制度で、現在英国内の一部地域で試行されている。
FTによれば、英国では16歳から24歳の若者の約8人に1人が教育・雇用・職業訓練から外れたニート状態にあり、その割合は過去4年間で3割以上増加しているという。
リーブス財務相は「若者を希望のない長期失業状態に放置しない」と述べ、「質の高い雇用がもたらす尊厳や安定、機会を奪わない。政府は若年失業の全面廃止を約束する」と明言した。パット・マクファデン労働年金相も「提供される教育や職業訓練、雇用を必ず受け入れなければならない」と強調した。
財源や制度の詳細は11月26日に発表される予算案で明らかにされる予定で、政府が直接若者に給与を支払うのか、雇用主への補助金とするのかは今後決まる見通しだ。
今年初め、英国政府は慢性疾患や障害者向けの雇用支援策に38億ポンド(約7,578億5,859万円)を計上した経緯があるが、労働組合や経済団体はさらなる財政投入を求めている。英労働組合会議(TUC)は、金融危機やコロナ禍で導入された年10億ポンド(約1,994億3,647万円)規模の「雇用保証プログラム」の復活を要求した。英商工会議所(BCC)も、中小企業の雇用促進のため政府による補助金支給を訴えている。
一方で、過去の類似施策の失敗も指摘される。
2009年に導入された「フューチャー・ジョブズ・ファンド」は、6か月以上失業手当を受けた18歳から24歳の若者に職業訓練や雇用を提供したが、費用の問題で翌年に打ち切られた経緯がある。
今回の新政策についても、具体的な賃金水準や職種、対象となる雇用主の範囲が示されていないことに批判が出ている。「公的資金で本当に新規雇用を創出するのか、それとも既存の低賃金職を補填するだけなのか、線引きを明確にすべきだ」との指摘がある。
英産業連盟CBIのレイン・ニュートンスミスCEOは「若者の失業問題の解決は経済的に極めて重要な課題だ」と述べつつ、「雇用コストを押し上げず、企業の採用意欲を損なわない実効的な制度設計を見極めたい」と述べた。
小売業者ネクストのサイモン・ウルフソン会長も「最近の労働市場はすでに悪化傾向にある」とし、「若者の雇用創出は容易ではない」と予測している。
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