米国の電気自動車(EV)ブランド、テスラが新型モデル「サイバーキャブ」を完全自動運転車ではなく、通常の運転装置を備えた一般車両として発売する可能性を示した。これは、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が掲げてきた「完全自動運転」ビジョンとは対照的な方向性だ。

28日(現地時間)の『ブルームバーグ』によると、テスラ取締役会会長のロビン・デンホルム氏は同日のインタビューで「必要に応じてサイバーキャブにハンドルとペダルを装備することもあり得る」と述べ、「大量販売を実現するために、基本設計の変更を検討する可能性がある」と明らかにした。手頃な価格帯のEV市場を狙うための現実的な妥協策とみられている。
サイバーキャブは投資家の間で「モデル2」と呼ばれており、中型セダン「モデル3」よりも価格を抑えた車両となる見込みだ。マスクCEOは昨年10月、ロサンゼルス近郊の映画撮影セットでハンドルもペダルもないサイバーキャブの試作機を初公開し、「2万5,000ドル(約385万円)の普通のEVを作ることは無意味だ」と断言していた。
しかし、マスク氏が推進してきた完全自動運転モデルは実現可能性の低さを指摘されてきた。米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は完全自動運転車に対して慎重な姿勢を崩しておらず、既存の安全基準を満たさない場合は生産が遅延する可能性があるためだ。
さらに、ピート・ブティジェッジ米運輸長官とマスク氏の対立も、完全自動運転の実現に向けた新たな障害になっているとみられる。マスク氏は今年5月、ブティジェッジ長官がテキサス州オースティンのテスラ工場を訪問した際、「自動運転は事故を10分の1に減らし、数百万人の命を救う」と訴えたが、その後スペースXの月面探査契約を巡って対立が生じ、マスク氏はSNS上で長官を「ダミー(Dummy・愚か者)」と揶揄するなど攻撃的な態度を見せた。
現在、米国ではグーグルのウェイモなど一部企業のみが限定的な自動運転サービスを運営しているが、これらの車両にも法律上ハンドルとペダルの設置が義務付けられている。NHTSAの現行法では、運転装置を持たない車両は年間2,500台までしか販売できない。ゼネラル・モーターズ(GM)も同様の規制の壁を越えられず、自動運転専用モデル「クルーズ・オリジン」事業を中止した。これは、NHTSAの承認を2年以上待ったにもかかわらず、進展が見られなかったためとされる。
デンホルム会長は「モデルYも当初はハンドルやペダルのない設計を計画していたが、販売のために規制に合わせて調整した」とし、「市場参入に必要であれば、サイバーキャブも同様の調整が行われるだろう」と述べた。サイバーキャブは来年、大量生産が予定されている。
 
            


















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