通信低下と信号機停止で道路の真ん中に立ち往生、大混乱

20日(現地時間)午後2時30分頃、米サンフランシスコのグローブ・ストリート周辺で近隣道路の信号機が一斉に停止し、飲食店や商店の照明も消えた。都市で大規模な停電が発生したためだ。近くの公演会場では公演が中止となり、クリスマスを前ににぎわっていた通りには車両や人が一気にあふれ出した。
信号機が止まった中でも、ドライバーは歩行者に注意を払いながら秩序を保って走行していたが、ほどなく市内の道路は混乱に陥った。原因となったのはグーグルが運営する無人(ロボ)タクシー「ウェイモ」だった。
停電が起きた地域ではウェイモの車両が交差点や道路の中央で赤色の非常灯を点灯させたまま次々と停止した。信号機が作動せず通信状況も悪化したことで、安全な走行ができないと運営側が判断し、配車サービスを停止したためだ。海外メディアは「自動運転車がいかに高度なセンサーを備えていても、都市の電力網や通信網といった外部インフラに強く依存していることを示した」と分析している。
停電で各地に立ち往生したウェイモ
今回の停電はサンフランシスコの電力会社の一つであるPG&Eの変電所で発生した火災が原因だった。CNBCなどによると、午後1時9分頃に停電が始まり、市全体の約30%に当たる13万世帯(商業施設を含む)が影響を受けたという。電力供給はその後、段階的に再開されている。
停電中、ウェイモの運行は事実上停止した。ウェイモはあらかじめ学習した精密な都市地図を基に走行し、レーダーやカメラなどのセンサーで信号機や周囲の状況を認識する仕組みだ。信号機が停電や故障で作動しない場合でも、人が運転する車であれば、交差点で周囲の流れを読み取り臨機応変に対応できる。しかし、信号を認識できなくなったウェイモは設計されたプログラム上、安全な運転ができないと判断し自ら停止した。交差点の中央や道路の途中、路地などで次々と止まったため交通を妨げる存在となった。ソーシャルメディアには「止まってしまっウェイモ」「車に挟まれたウェイモ」といった投稿が相次いだ。
自動運転の普及は時期尚早
今回の出来事を受け「人の介入を前提としない自動運転車の本格的な普及は時期尚早だ」との指摘が出ている。自動運転技術は高度化しているものの、技術の限界や都市インフラが十分に整っていない中で起きる例外的な事態が、都市全体をより大きな混乱に陥れる恐れがあるためだ。今年初めに米自動車協会(AAA)が行った調査では、米国のドライバーの約3分の2が自動運転車に不安を感じていると回答した。
また、無人車が道路を走行するには交通システムなど都市インフラが不十分だとの見方もある。道路工事などによる環境変化への対応や停電時に備えた補助電源網、常時遠隔操作が可能な通信網の整備が必要だという指摘だ。米マサチューセッツ工科大学(MIT)交通センターのブライアン・ライマー研究員はCNBCに対し「サンフランシスコでウェイモの運行が止まったことは、都市が高度に自動化された車両で街路が埋め尽くされる事態に、まだ対応しきれていないことを示している」と述べた。
無人タクシーが徐々に普及する中で、こうした懸念は一段と強まっている。サンフランシスコはウェイモに加え、テスラやアマゾン傘下のズークス(Zoox)も無人タクシーの運行に乗り出しており「無人タクシー競争」の最前線にある都市だ。米IT専門メディアのテッククランチによると、ウェイモは全米で約2,500台を運用しており、このうち約800台がサンフランシスコを含むシリコンバレーで走行している。ズークスやテスラも無人タクシーの商業化を進め、事業拡大を図っている。最近ではウェイモが市内に加え、制限速度が時速105キロの高速道路も走行可能となるなど、サービス提供エリアの拡大が続いている。













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