
日本銀行の植田和男総裁は、政策金利の追加引き上げに前向きな姿勢を改めて示した。超低金利政策からの正常化を進めるうえで、賃金と物価の見通しが成否を左右するとの考えをにじませた。
共同通信と日本経済新聞によると、植田総裁は25日、日本経済団体連合会(経団連)の行事で講演し、経済・物価の見通しが想定通りに実現すれば、政策金利を引き上げながら金融緩和の度合いを調整していく方針を述べた。実質金利はなお極めて低い水準にあるとも説明し、賃金上昇の流れは来年も続くとの見通しを示している。
日銀は19日の金融政策決定会合で、短期の政策金利を0.5%程度から0.75%程度へ0.25ポイント引き上げた。1995年以降で最も高い水準に当たり、植田総裁は決定後の会見でも、段階的な利上げを通じて緩和の度合いを調整する可能性に触れていた。
講演では、賃金と物価がほとんど動かなかった「ゼロ・ノーマル」の状態へ戻る公算は大きく低下したとの認識も示された。緩和の度合いを適切に調整できれば、企業が安心して投資できる環境が整い、中長期の成長につながると説明した。賃上げや人材投資に加え、人工知能(AI)を含む労働代替型の資本投資の重要性も強調している。
市場では次の利上げ時期を巡り見方が割れている。来年上半期、とりわけ6~7月を有力視する声がある一方、円安基調の継続と物価の推移が主要な判断材料になるとの見立てもある。
実際、今回の利上げ後の外国為替市場では円安が進んだ。発表直前に1ドル=155円台後半だった円相場は、一時157円台半ばまで下落し、その後も156円前後で推移している。
東京短期リサーチなどによれば、市場が織り込む追加利上げの確率は2026年6月までで約60%とされる。日銀内部でも、円安が続き物価上昇率が想定以上に高止まりする場合や、来年春の春闘で賃上げ率が大きくなる場合には、来年4月の利上げもあり得るとの見方が出ているという。
もっとも、食品やエネルギー価格の安定で消費者物価指数(CPI)の上昇率が一時的に2%を下回れば、利上げが来年夏以降にずれ込む可能性も指摘されている。日銀関係者は、物価が2%を下回る局面での利上げは政策運営上の負担になり得るとの見方を示した。













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