
ドナルド・トランプ米大統領が、国連傘下機関31か所を含む国際機関66か所からの脱退を盛り込んだ文書に署名した。今回の動きを単なる「国際機関からの離脱」として片付けるのは難しい。米国はこれまで、複数の国際機関で主導的な役割を担い、拠出金などを通じて運営を支え、国際紛争の調停にも直接・間接に関与してきた。
米国は今後、他国のために資金を投じ続ける考えはないという立場を鮮明にしている。「ロイター通信」によると、ホワイトハウスは7日、脱退の意向を示した66機関について「米国の国益に反する形で運営されている」と主張し、急進的な気候政策や「グローバル・ガバナンス」、米国の主権や経済力と衝突する理念的プログラムを助長していると批判した。
さらにホワイトハウスは、国際機関が米国の優先順位よりも「グローバリストの議題」を前面に出し、非効率な運営で米国の納税者の負担を増やしているとも指摘した。そのうえで、脱退によって捻出される財源を、インフラ整備、軍備増強、国境警備の強化など「米国第一」の課題に振り向けるとしている。米国の大規模な離脱方針は、国際社会全体に緊張を広げている。
国連からの後退は、米国自身へのしっぺ返しにも

米紙「ニューヨーク・タイムズ」は7日、トランプ大統領の国際機関離脱の方針について、国連にとって「存立に関わる脅威」になり得ると報じた。米国は国連全体予算の約22%を負担しているとされ、離脱が現実化すれば、気候変動対策、保健、難民支援などの主要事業が資金面で打撃を受ける可能性がある。
英紙「フィナンシャル・タイムズ」も同日、世界保健機関(WHO)や国連気候変動枠組条約(UNFCCC)からの離脱が、感染症対応や炭素排出を巡る国際的なルール形成を困難にし、標準そのものが揺らぐ恐れがあると懸念を示した。
国際危機グループの国連担当ディレクター、リチャード・ゴーワン氏は「BBC」の取材に対し、移住・気候関連の国際枠組みから手を引くことは短期的にはコスト削減に見えるとしつつ、長期的には制御不能な難民の流れを放置する結果を招きかねないと指摘した。国際的な移住管理の仕組みの外に出れば、中南米からの難民・移民が米国国境へ集中する事態を抑える外交的手段が細る、という見立てだ。
世界資源研究所(WRI)のデイビッド・ワスコウ氏も、UNFCCCからの離脱は、気候リスクがグローバル供給網を直撃した場合に米企業の輸入コストを押し上げ、経済の不安定化につながり得ると分析しており、結局は米国経済への「ブーメラン」になり得るとみている。
中国が「空白」を埋める可能性

「BBC」は専門家の見方として、米国の国際機関離れが、国際社会での中国の影響力拡大につながり得ると報じた。ゴーワン氏は、中国は開発政策に比重を置く国連機関に長年投資してきた一方、米国がその分野から後退すれば、結果として中国が優位に立つとの見通しを示している。
米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」も同様の構図を指摘し、米国が退く多国間の舞台で中国が存在感を強めれば、米国が掲げてきた国際的リーダーシップが相対的に弱まる可能性があると論じた。さらに、国際枠組みからの離脱が将来のクリーンエネルギー市場で米国の競争力を損ない、エネルギー覇権の重心が移る恐れがあるとも伝えている。米国が多国間主義よりも単独行動を優先する姿勢を強めれば、「米国第一」が「米国の孤立」へと傾きかねない、という警告も出ている。
















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