米「ワシントン・ポスト」発行人、記者300人解雇後にオーナーへ「感謝」残し辞任
労働組合「米報道の破壊者」と痛烈批判

米有力紙「ワシントン・ポスト(WP)」は7日、最高経営責任者(CEO)兼発行人を務めていたウィル・ルイス氏が辞任したと発表した。
「ニューヨーク・タイムズ(NYT)」によると、ルイス氏は4日、大規模な人員削減を決定した会議にも出席しており、そのわずか数日後の突然の辞任は社内に大きな衝撃を与えたという。
ルイス氏は5日、サンフランシスコで開かれたスーパーボウル関連イベントに出席する姿を撮影されており、この写真がスポーツ部門の閉鎖やリストラ発表と重なったことで、現職・元職員から広範な反発を招いた。
記者300人解雇からわずか3日で電撃辞任
ルイス氏は4日、長年続く財政赤字の解消を目的として、全体の約30%に当たる300人以上の記者を解雇する大規模な構造改革を断行。そのわずか3日後に職を辞した。
辞任にあたりルイス氏は、「2年間にわたり変革を主導してきたが、今が退くべき適切な時期だと判断した」と述べ、「在任中、支援と指導をしてくれたジェフ・ベゾス氏に感謝したい。これ以上のオーナーはいない」と語った。
また、「WPの持続可能な未来を確保するため、困難な決断を下してきた。これにより、今後も何百万もの読者に質の高い非党派的なニュースを届け続けられるはずだ」と主張した。
会社側は、最高財務責任者(CFO)のジェフ・ドノフリオ氏が暫定的に発行人兼CEOを務めると発表した。
ドノフリオ氏は社員向けメッセージで、「ジャーナリズムの強みを羅針盤に、持続可能で成功する未来へ導く役割を担うことを光栄に思う」と述べた。
ベゾス氏も声明で、「WPは不可欠な報道使命と特別な機会を併せ持っている。読者は毎日、成功への道筋を示してくれる。データは何が価値あるものか、どこに集中すべきかを教えてくれる」とコメントした。
一方「CNN」は、辞任発表の中で引き継ぎ支援に残るとの言及が一切なかった点を挙げ、「極めて唐突な人事交代だ」と伝えた。
自身を巡る疑惑報道封殺疑惑で編集局と対立
ルイス氏は2023年11月に発行人に就任し、慢性的な経営難に直面するWPの再建を約束していた。
過去には「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」の発行人や「デイリー・テレグラフ」の編集長を務め、ルパート・マードック氏のメディア帝国で要職を歴任してきた。
しかし就任翌月の12月、「NPR」は、ルイス氏がマードック傘下の英タブロイド紙で発覚した2010年代初頭の電話盗聴スキャンダルの一部を隠蔽しようとした疑惑に関与していると報道した。
数カ月後には、NPRが「過去記事を掲載しないことを条件にインタビューを持ちかけ、報道を抑えようとした」とする追加報道も行った。
これらの暴露に加え、ルイス氏が自身に関する疑惑についてWP内部での報道を封殺したとの主張が浮上し、編集局内では新発行人の報道倫理を巡る懸念が強まった。
経営再建に失敗したと考える記者たちは、今回の辞任を公然と歓迎した。
WP編集局の労働組合「ワシントン・ポスト・ギルド」は声明で、「ルイス氏の退任は、もっと早く実現すべきだった」と述べ、「彼は偉大な米国の報道機関を破壊しようとした人物として記憶されるだろう」と厳しく批判した。
さらに、「WPを救う機会はまだ残されている。ベゾス氏は即刻、大量解雇を撤回するか、新聞の未来に投資する意思のある人物に売却すべきだ」と主張した。
構造改革で報道力に深刻な打撃
ルイス氏の大規模リストラにより、WPの国内・国際・スポーツ報道は深刻な打撃を受けた。前編集長のマーティ・バロン氏は、「世界有数の新聞社であるWPの歴史の中でも、最も暗い日の一つだ」と語った。
現編集長のマット・マレー氏は、ズーム会議を通じて社員にルイス氏の辞任を伝えた。
元労組委員長のケイティ・メトラー氏は7日、「彼が解雇されたことを喜んでいる。私の友人たち全員を解雇する前に、彼自身が解雇されていればなお良かった」と語り、事実上の更迭だとの認識を示した。
ベゾス氏は、ルイス氏を起用することで新聞社を刷新し、長年続く赤字と読者減少を反転させようとした。
ルイス氏は、人工知能(AI)の導入、新たな意見プラットフォーム「リップル(Ripple)」の立ち上げ、有料購読者2億人という野心的目標(BHAG)を掲げて改革を進めたが、安定的な収益確保には至っていないとNYTは伝えている。
在任期間中、多くの社員が退職し、すでに昨年の早期退職制度によって人員は減少。ニュースルーム全体に不満が蔓延していた。
2024年5月には、政治・経済といった中核分野とは別に、ソーシャルメディアとサービス・ジャーナリズムに特化した第三の編集部門を新設する計画を発表した。
その後、編集局長のサリー・バズビー氏が突然辞任し、ルイス氏は自身の元同僚2人を幹部編集者として迎え入れた。NYTは、バズビー氏とルイス氏の間に辞任前から深刻な対立があったと報じている。
バズビー氏の辞任発表翌日、ルイス氏は後任を発表するタウンホール・ミーティングを開催したが、その場で記者や編集者に対し「あなたたちの記事は読まれていない」と発言し、強い反発を招いた。その後、編集局に姿を見せることはほとんどなかった。
昨年、ルイス氏と社員の不信感が深まる中、元幹部編集者2人がベゾス氏に対し、ルイス氏の交代を求めるメールを送った。これは17年間編集長を務めたレナード・ダウニー氏と、50年以上WPに在籍し編集局長を務めたボブ・カイザー氏によるものだったが、ベゾス氏は応じなかった。
2024年にWPに加わったマレー氏は、先週「フォックス・ニュース」のインタビューで、WPの士気低下は長年の問題だったと語っている。
















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