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中国の情報戦が揺らす「台湾の内側」…ミサイルより先に進む“見えない圧力”

望月博樹 アクセス  

引用:香港SCMP
引用:香港SCMP

全面戦争の前に、まず台湾の安全保障体制を揺さぶる戦略

台湾は表向きは選挙や報道の自由がある民主的な社会だが、安全保障の観点から見ると、内部が徐々にむしばまれているとの警告が相次いでいる。

国家安全会議の秘書長の補佐官までもが、中国のスパイ容疑で起訴された事件は、中国による浸透がもはや抽象的な脅威ではなく、現実の問題であることを物語っている。国家安全会議は、国防や外交、中国と台湾の両岸関係の戦略を調整する最高の安全保障の司令塔であるだけに、その組織にまで中国の浸透が及んでいたとされる事実は大きな衝撃を与えた。

専門家らは「中国が選んだ台湾攻略の最優先の手段はミサイルではなく、信頼と組織を崩壊させる長期にわたる浸透だ」と分析している。

引用:SBSニュース
引用:SBSニュース

スパイの摘発の件数、数年で4倍以上に急増

ここ数年、台湾で摘発・起訴された中国のスパイ事件は、目に見えて増えている。2021年に16件ほどだった公式の起訴件数は、2023年に48件、2024年には60件を大きく上回る数字が出ている。

捜査能力の向上だけでは説明できない速さであるため、実際の浸透の規模と活動の強度が、ともに増大したとの見方が支配的だ。一部の研究者は、摘発されていない事例も考慮した場合「潜在的な協力者や情報ネットワークを合わせて、5,000人以上が中国の情報網とつながっている可能性がある」との推計まで示している。

引用:Threads@tsai_ingwen」
引用:Threads@tsai_ingwen」

標的は軍や情報機関だけではない…社会全体に広がる取り込み工作

台湾の防諜当局は、中国がさまざまなルートを通じて、広範囲に人を取り込んでいるとみている。現役・予備役の軍人や情報機関の関係者はもちろん、公務員や政治家、実業家、学者、ジャーナリスト、市民団体の人々までもが取り込みの対象に入る。

海外旅行や留学、ビジネスを介して接近し、金銭やビジネスチャンス、政治的な支援などを餌に、長期間にわたって関係を築く手法が代表的だ。米国や英国のように、年に1〜2件程度のスパイ事件が発生する国々とは異なり、台湾は事実上「常に情報戦にさらされる環境」に置かれているといえる。

引用:depositphotos*この画像は記事の内容と一切関係ありません
引用:depositphotos*この画像は記事の内容と一切関係ありません

軍内部への浸透が最も危険な理由

何よりも深刻なのは、台湾軍の内部への浸透の事例だ。最近摘発された事件では、現役の将校や准尉、予備役が中国側に軍事情報や機密を提供し、戦時の投降を誓約していた状況までもが明らかになった。

中国は彼らに「戦争が起きたら、部隊内で混乱を引き起こし、特定の施設を破壊し、指揮官の動向を報告し、さらには主要な人物を排除する」といった具体的な任務を与えていたとされる。つまり、戦争が始まった後に新たに投入するスパイではなく、すでに平時のうちから各部隊の内部に配置を終えた「スリーパー(潜伏工作員)」を育てているということだ。

安全保障問題が、そのまま政治対立に発展する構図

国家安全会議の内部でのスパイ事件の後、台湾の立法院では、野党の国民党を中心に秘書長の辞任を求める決議案が可決され、政治的な波紋が広がった。

与党と野党は責任の所在をめぐって正面から衝突し、安全保障の論争は瞬く間に政争の道具と化した。国家安全会議は議会の決定を「中国の政治工作の結果だ」と反論したが、社会的な不信と混乱はさらに拡大した。

専門家らは、こうした政治的な分裂そのものが中国の狙いだと指摘し「内部での争いが続けば、銃弾を一発も撃たずに国家の機能が麻痺する可能性がある」と警告している。

引用:自由時報
引用:自由時報

信頼が崩れ、「誰がスパイかわからない社会」に

スパイ事件が政界や軍、メディア、学界、市民団体にまで広がり、台湾社会には「誰が取り込まれたのか分からない」という恐怖が広がっている。

こうした空気は、政府の発表や軍の作戦の説明、メディアの報道まで、すべてを疑わせる結果を招いている。危機的な状況で必要なのは、情報に対する最低限の信頼と社会的な結束だが、中国の浸透や心理戦は、まさにこの点を狙っている。

結局、台湾の最大の弱点は「軍事力の不足」ではなく、社会の全体に広がる不信と疲弊感だという分析が、説得力を増している。

引用:YouTube
引用:YouTube

中国の戦略:全面侵攻の前に、内部をまず崩壊させる

中国もまた、台湾への上陸作戦が莫大なコストと、国際的な反発を招くことを十分に理解している。

そこで選んだのが、銃やミサイルより先に、スパイ戦や世論戦、サイバー戦、経済的な圧迫によって、相手の抵抗の意志をむしばむ「ハイブリッド戦争」の戦略だ。戦争の当日に突然始まるのではなく、平時から数十年にわたって社会の内部に入り込む、緩やかな戦争に近い。

その目標は「銃撃戦が始まる前に、すでに勝敗が傾いている状況を作ること」であり、いま台湾は、まさにその試金石となっている。

引用:YTN
引用:YTN

東アジアがここから学ぶべき教訓

台湾の事例は、日本を含む周辺の国々にとっても明確な警告のシグナルだ。外部からの軍事的な脅威に劣らず、長期にわたる情報戦や世論工作、内部の取り込みが、体制の安定に致命的な影響を与えうることを示している。

特に、陣営の対立が激しい社会ほど、安全保障の問題を政争の道具に使い始めると、それ自体が外部勢力の「武器」になりかねない。結局、台湾がこの状況をどう収拾し、防諜と政治、社会的な信頼の回復を並行して進められるかが、今後の東アジア全体にとって一つの指標となる可能性が高い。

望月博樹
//= the_author_meta('email'); ?>editor@kangnamtimes.com

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