ウクライナ戦争終結を巡り、外交戦が激化

15~17日にフランス東部のリゾート地エビアン=レ=バンで開かれたG7(主要7か国)首脳会議に招かれたウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、米国のドナルド・トランプ大統領をはじめとする各国首脳と相次いで会談し、ロシアへのけん制と圧力強化を訴えた。同じ頃、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は首都モスクワから東に800キロ離れたカザンへ向かい、2日間の日程で17日に開幕したロシア・ASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議に出席する各国首脳を迎えた。イラン戦争が終戦MOU(了解覚書)の締結で一段落するなか、4年4か月にわたるロシア・ウクライナ戦争を自国に有利な形で終結させようと、双方の外交戦が激しさを増している。
必死の首脳外交でG7の支持を引き出したゼレンスキー大統領
この日、G7首脳が会議の締めくくりに採択した共同声明は、冒頭からウクライナへの強い支持を前面に押し出した。声明は「ウクライナが自由、主権、領土の一体性を守るため、揺るぎない支持を送り、結束する。ここ数か月、戦場で示したウクライナの回復力と前進を高く評価する」と明記している。さらに「ウクライナへの防空能力、追加の防空システムおよび迎撃ミサイル、長距離打撃能力の供給を拡大し、軍需生産の拡大を可能にするライセンス上の優遇措置とエネルギーの追加供給を約束する」と盛り込んだ。ウクライナに侵攻したロシアについては「戦時経済への圧力を強め、ロシア産石油とガスを含む制裁をさらに強化する」とした。声明には「トランプ大統領が(イランとの終戦交渉を通じて)ホルムズ海峡の再開放を実現した以上、今こそ(ウクライナへの)追加措置を進める適期だと判断する」との内容も含まれていた。
これに先立ち、議長国フランスの招待を受けてG7首脳会議に加わったウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、トランプ大統領や欧州主要国の首脳と多国間・二国間会談を行った。共同声明が公表されたことで、自国に有利な方向へ終戦協議を導こうとするゼレンスキー大統領の首脳外交は、少なからぬ成果を上げたとの見方が広がっている。これまでゼレンスキー大統領にたびたび不満を示してきたトランプ大統領の態度も、今回の首脳会議では明らかに変化した。トランプ大統領は「解決のために私ができることは何でもする」と述べ、ロシア産原油に対する制裁猶予の打ち切りにまで言及し、ウクライナに配慮する姿勢を見せている。
これに対し、ほかの首脳も歓迎の反応を見せた。最近、駐独米軍削減の決定を巡ってトランプ大統領とぎくしゃくした関係になっていたドイツのフリードリヒ・メルツ首相は「米国と欧州が戦争を終わらせるために、できることをすべて尽くしているという事実は楽観論をもたらす」と述べている。メルツ首相はトランプ大統領に、第47代米国大統領を象徴する数字の47とトランプ大統領の名前を入れたサッカーのドイツ代表ユニホームも贈った。英国のキア・スターマー首相は「平和が戻るまで、プーチン大統領とその側近への圧力を引き続き強めていく」と語った。
ASEAN首脳を招き、孤立脱却を図るプーチン大統領
一方、ロシアのカザンでは17日、ロシア・ASEAN首脳会議が2日間の日程で開幕している。ASEAN議長国であるフィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領、シンガポールのローレンス・ウォン首相、タイのアヌティン・チャーンウィーラクン首相、マレーシアのアンワル・イブラヒム首相、カンボジアのフン・マネット首相、昨年ASEANに加盟した東ティモールのシャナナ・グスマン首相ら東南アジアの首脳が相次いでロシア入りした。
ロシア・ASEAN首脳会議は今年で5回目となるが、今回の会議はとりわけ注目を集めている。2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻後、プーチン大統領と東南アジアの首脳が一堂に会する初の多国間首脳会議となるためだ。ASEAN首脳がそろってロシアに集まるのも、2016年のソチ会議以来10年ぶりとなる。G7首脳会議で西側諸国がウクライナとの連帯を協議する時期に開かれたことから、プーチン大統領による対抗外交の性格も濃いとの見方が出ている。
今回の会議では、西側の制裁に直面するロシアがASEANとの経済・通商協力を拡大し、孤立を和らげる方策が主要議題として扱われる見通しだ。共同声明に、ロシアの立場を一部反映した終戦関連の文言が盛り込まれる可能性も取り沙汰された。
特に、今年のASEAN議長国が親米色の強いフィリピンである点も注目を集めている。マルコス大統領は出発に先立ち、「ロシアと安全保障、通商、エネルギー、食料安全保障など幅広い分野で踏み込んだ議論が行われることを期待する」と述べた。これにより、ロシアとASEANが経済・エネルギー分野で協力を広げ、関係を一段と強化するとの見通しが出ている。













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