
米国のドナルド・トランプ大統領が2025年4月2日、世界を揺るがした相互関税政策を発表する数日前まで、具体的な関税率を確定させていなかったことが分かった。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)のマギー・ハバーマン記者とジョナサン・スワン記者が23日(現地時間)に刊行した著書『Regime Change(レジーム・チェンジ)』で明らかにした。
NYTのホワイトハウス担当である両記者は同書で、相互関税政策の発表日「解放の日」を前後して、ホワイトハウス内部で起きた混乱を描いている。
同書によると、相互関税政策の発表を数日後に控えた時点で、米国のハワード・ラトニック商務長官と米国のスコット・ベッセント財務長官は、世界各地の貿易相手国の関係者に連絡を取り、警告を伝える役割を分担していたという。
ただ、警告の内容は曖昧で、両長官は相手国に報復措置を講じないよう求めるにとどまった。
著者らは「警告が曖昧だったのは、両長官もトランプ大統領が何をするのか把握していなかったためだ。トランプ大統領自身も分からず、まだ決断を下していなかった」と記している。
発表直前まで具体的な税率が固まらなかったのは、関税政策が綿密な分析やシミュレーションを経て決められたものではなく、トランプ大統領個人の直感と頑なな姿勢に左右されながら調整されていたためだ。
トランプ大統領が関税政策の策定過程で、政府内から提出された公式資料を信用せず、補佐官に自身の考えに合う数字を探すよう、グーグルで検索するよう指示した逸話も紹介されている。
トランプ大統領は「解放の日」の1週間前に当たる2025年3月26日、ホワイトハウスの大統領執務室で側近らと関税戦略を協議した際、「誰も俺に、くそったれな数字を持ってこない」と不満を漏らした。
さらに、執務室の壁際の隅に座っていたホワイトハウスのナタリー・ハープ補佐官に対し、「グーグルで調べろ。それで本当の数字を俺に持ってこい」と指示したという。
ハープ補佐官はトランプ大統領の近くで待機し、SNS上の投稿やニュースを検索して印刷した資料を手渡す役目を担っていた。トランプ大統領は「あの子は絶対に俺のそばを離れない」と語るなど、普段からハープ補佐官への信頼を示していたとされる。

ラトニック長官は米通商代表部(USTR)が算出した各国の対米関税率に関する資料を提示したが、トランプ大統領は「こんなのはクソみたいなでたらめの数字だ」として退けたとされる。
トランプ大統領は、中国やインドが米国に課している関税率は、USTRの集計資料よりはるかに高いと信じていたためだった。
ラトニック長官は米通商代表部のジェミソン・グリア代表に向かって「何か言え」と促したものの、トランプ大統領に異を唱える意思がなかったグリア代表は沈黙を守ったという。
各国の相互関税率は、トランプ大統領がホワイトハウスのピーター・ナバロ貿易・製造業担当上級顧問と協議して決めた。しかし、その算定が場当たり的だったことから、ホワイトハウスの側近からも不満が出ていたとされる。
当時トランプ大統領が発表した各国の関税率は、貿易赤字額を輸入額で割り、さらにその数値を半分にしたものだった。理論的な根拠を欠いた恣意的な算定だとの批判を受けた。
ラトニック長官は側近らに対し、この大まかな計算式への不満を漏らしながら、「俺は中学までしか出ていないからな」と自嘲気味に冗談を語ったという。
これは、ナバロ顧問がハーバード大学で経済学の博士号を取得していることを皮肉った発言とみられる。
一方、発表翌日に相互関税政策が報道機関から集中砲火を浴びると、トランプ大統領は私的な場でナバロ顧問を責め、「ピーターのクソみたいに愚かな数字だ」と不満をぶちまけたとされる。
最も大きな問題は、金融市場の反応だった。
相互関税政策の発表後、ニューヨーク株式市場ではスタンダード・アンド・プアーズ500種株価指数(S&P500)が2日間で12%急落した。安全資産とみなされていた米国債市場でも投げ売りが続き、米国債価格の急落を受けて利回りが急上昇した。
著者らによると、トランプ大統領はベッセント長官やラトニック長官ら側近が受け入れられる範囲を超え、非合理的に高い関税率をより長く維持しようとしていた。
ベッセント長官は私的な場で、トランプ大統領の高いリスク許容度に驚嘆し、それをトランプ大統領の政治的成功を支える中核的な要因と捉えていたという。
また、ベッセント長官はトランプ大統領を、かつての上司でヘッジファンド投資家のジョージ・ソロス氏と比較し、「2人は同じ種類の動物だ」と評した。両者とも並外れたリスク選好と、生き残る力を備えているとの評価だった。














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