人民元建て債券・融資が倍増、ドル代替通貨として存在感
低金利で調達コスト低下、投資需要が拡大
外国人による人民元建て債券発行は過去最高
海外向け人民元融資も4年で3倍に増加
中国の人民元建て債券発行と海外向け人民元融資が急増し、人民元がグローバルな資金調達通貨として地位を固めつつあるとの見方が広がっている。現地の証券業界や海外メディアは、人民元の低金利による調達コストの低下に加え、国際決済での利用拡大が背景にあると指摘した。
「ロイター通信」が22日(現地時間)に報じたところによると、今年1〜11月における外国主体の人民元建て債券発行額は、オンショア市場で1,697億元(約3兆7,584億円)、オフショア市場では過去最大となる8,019億元(約17兆7,625億円)に達した。世界全体の年間債券発行額は約9兆5,700億ドル(約1,489兆9,102億円)に上ることを踏まえると、規模はなお限定的だが、直近3年間で人民元建て発行額は2倍以上に拡大した。

発行規模の拡大とともに、発行体の裾野も大きく広がり、市場構造の再編が加速した。中国メディアの「上海証券報」は「当初、金融機関による発行と銀行資金の参加が中心だったが、現在は国有企業、優良民間企業、テクノロジー企業、海外機関へと発行主体が大きく多様化した」と分析した。実際に昨年末以降、アリババ、百度(バイドゥ)、騰訊(テンセント)、美団(メイトゥアン)といった中国IT大手に加え、シンガポール政府系ファンドのテマセク、ネスレ、保険大手チャブ(Chubb)など海外発行体も相次いでディムサム債市場に参入した。
人民元建て海外融資も急増した。中国の銀行による人民元建て海外貸出残高は、過去4年間で3倍以上に拡大し、総額2兆5,200億元(約55兆8,193億円)に達した。中国人民銀行によれば、同期間に外貨建て融資残高は減少し、昨年末時点で3,750億ドル(約58兆3,861億円)となった。こうした動きを受け、人民元建て融資が将来的にドル建て融資を上回る可能性も指摘された。
銀行関係者は、人民元建て債券・融資が拡大する最大の要因として調達コストの低さを挙げた。2022年以降、米国がインフレ抑制のため利上げを進めた一方、中国は景気減速とデフレ圧力への対応として緩和的な金融政策を維持した。その結果、人民元の調達コストはドルに比べて低水準にとどまり、発行体と投資家の双方にとって魅力的な環境が形成された。
同時に、人民元そのものを保有しようとする動きも強まった。ドイツ銀行で中国債券資本市場部門を統括するサミュエル・フィッシャー氏は「ロイター」に対し「人民元は単なる金利差取引の対象ではなく、資産配分の一角として認識され始めている」と述べ「ドルが大きな転換点に差しかかる中、通貨の分散化は現実のものとなりつつある」と語った。同行の熊奕(シュン・イー)チーフエコノミストも「上海証券報」に対し「かつての人民元高を見込んだ投機的需要とは異なり、現在は国境を越えた決済通貨としての実用価値が重視されている」と説明した。

人民元決済は実際に拡大している。中国政府が長年にわたり、人民元を国際貿易・金融決済通貨として育成してきた成果だ。国際決済銀行(BIS)によると、世界の店頭(OTC)外国為替取引における人民元のシェアは今年4月時点で約8.5%に上昇し、10年前の約2倍となった。これは4位の英ポンド(10.2%)に迫る水準だ。なお、外国為替取引は2通貨間で行われるため、シェアの合計は200%となる。
「一帯一路」構想をはじめとする中国主導のインフラ事業も、人民元需要を押し上げた。インドネシアやカザフスタンは今年、オフショア人民元市場でディムサム債を発行し、ケニアはドル建てだった鉄道建設融資を人民元建てに切り替えた。エチオピアでも同様の転換が検討されていると伝えられた。
もっとも、専門家は中国がドル覇権を直接的に置き換えようとしているわけではないと分析した。BNPパリバ・アセットマネジメントのチーロ戦略担当は、「中国は宣言的にドルに挑むのではなく、数千件に及ぶ実際の資金調達や決済を通じて、代替的な金融エコシステムを構築している」と述べた。そのうえで「中国の狙いはドルを崩すことではなく、ドル中心の金融システムが対中圧力の手段として使われないようにする点にある」と語った。













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