
防衛省が毎年刊行する「防衛白書」の草案で、中国とロシアの軍事的脅威を念頭に「新たな危機の時代に突入した」との認識を示したと朝日新聞が10日報じた。
防衛白書の草案は「パワーバランスが大きく変化し、国家間の競争が顕著になっている」とし、「特に米中競争がさらに深刻化する可能性がある」と予測した。防衛省は中国とロシアの軍事動向について「安全保障上の重大な懸念」とし、「力による一方的な現状変更とその試みは、既存の国際秩序への深刻な挑戦だ」と批判した。北朝鮮のウクライナ戦争参戦やロシアとの軍事協力については「安全保障環境に多層的な影響を及ぼす可能性がある」と懸念を示した。
防衛白書の草案は、北朝鮮が弾道ミサイルに核兵器を搭載して日本を攻撃する能力を保有していると分析し、「従来以上に重大かつ切迫した脅威」と指摘した。また、中国が日本と領有権を争う尖閣諸島や東シナ海で活発な軍事活動を展開していることについて、「これまでにない最大の戦略的挑戦」と強調した。台湾情勢については、中国が恒常的な軍事活動を通じて実戦能力の向上を図っていると指摘した。ロシアに関しては「極東地域にも最新装備を配備し、東アジア地域での軍事活動を継続している」と明らかにした。防衛省は7月の閣議を経て、防衛白書を一般公開する予定だ。
一方、日本経済新聞は、中国海警局のヘリコプターが3日に尖閣諸島付近の領空を侵犯したことに関連し、尖閣諸島を巡る両国間の対立が新たな局面に入ったと評価した。中国の船舶はこの日まで173日連続で尖閣諸島の周辺海域を航行していた。今後、中国が航空機やヘリコプターを尖閣周辺の空域に派遣する頻度が増加する可能性があるとの見方もある。日経は「中国は日本の民間小型機に対応して『防空』を口実に領空を侵犯した可能性がある」とし、中国側が些細な事件を契機に領空侵入の口実を作る「サラミ戦術」を用いていると分析した。