
1990〜91年の湾岸戦争以降、米国が軍事介入を開始する際に象徴的な光景として繰り返されているものがある。水上艦や巡洋艦の垂直発射装置(VLS)から、炎を噴き上げながら飛び立つトマホーク巡航ミサイルだ。この光景は単なる演出ではなく、現代米軍の戦争概念と戦略の変化を象徴している。
トマホークは、戦略兵器制限交渉(SALT)による規制を受けにくい核攻撃手段として開発された巡航ミサイルである。一種の「規制回避型戦略兵器」であったが、その性能は単なる抜け道の域を超えていた。最大の特徴は低空侵入能力にある。トマホークは地形等高線照合(TERCOM)を利用し、事前に入力された地形データと実際の地形を照合しながら飛行する。レーダー高度計を通じて自機位置を継続的に補正しながら数十メートルの高度で飛行でき、実戦では30〜50メートルの超低空飛行が一般的だった。このような飛行プロファイルは、当時の防空網の構造的弱点を突いたものだ。地上レーダーは地形障害物を避けるため高い位置から空に向けて電波を照射するため、低高度には死角が存在する。早期警戒機(AWACS)が本格的に普及する前までは、この死角を利用した低空侵入が極めて効果的な戦術だった。F-111やパナビア・トーネードなどが可変翼構造を採用したのもこのためだ。
ソ連の核攻撃用に開発されたトマホークミサイル
しかし、トマホークは戦闘機よりもはるかに小型で低速であり、さらに低高度を飛行できる上、レーダー反射断面積(RCS)も小さかった。その結果、当時のソ連を含むほとんどの国の防空網では事実上対応が困難だった。ここに高い命中精度が加わった。その後、デジタル画像照合航法(DSMAC)、GPS、慣性航法システム(INS)が統合され、トマホークは「特定の建物の特定の窓」をピンポイントで攻撃できるレベルの精度を確保した。核弾頭まで搭載可能だった初期型は米国にとって決定的な打撃手段であり、ソ連にとっては脅威の象徴となった。
冷戦後半、トマホークはパーシングIIミサイルと共にソ連に強力な圧力をかけた。西ドイツに配備された地上発射型トマホークはモスクワを射程に収め、早期警戒戦力が脆弱だった当時のソ連は対応手段を欠いていた。結局、この圧力が中距離核戦力(INF)全廃条約の締結へとつながった。米国は核弾頭型トマホークを退役させる代わりに、通常弾頭型を維持し戦術兵器へと転換した。この従来型トマホークは実戦でその威力を証明した。砂漠の嵐作戦の際、米国は297発を使用してバグダッドの防空網を無力化し、その後のコソボ空爆やイラク戦争初期の「衝撃と恐怖」作戦では700発以上を投入した。その後もリビアやシリアなどで繰り返し使用され、「開戦の合図」というイメージを確立した。
問題はコストと消耗量だ。1990年代には1発当たり100万ドル(約1億5,000万円)前後だったが、最新のブロック5は250万〜400万ドル(約3億8,000万〜6億1,000万円)に達する。一方、実戦では数十から数百発単位で消費される。最近のイランとの衝突では開戦3日間で400発が使用され、短期間に数年分の生産量を消耗する事態が発生した。これに対し、米国は生産量を年間1,000発規模に拡大しようとしている。
米国、イラン戦争3日目にトマホーク4年分の生産量を消費
そうした中、新たな転換点となったのがイランの自爆ドローン「シャヘド136」だ。この兵器は構造が単純で民生部品での製造が可能なため、価格は約2万ドル(約300万円)程度に過ぎない。長い航続距離と大量生産が可能という点で、「低コスト長距離打撃手段」という新しいパラダイムを提示した。ロシアはこれを「ゲラン2」としてライセンス生産し、月間に数千機規模で製造しており、ウクライナ戦場で大量運用している。
米国も対応に乗り出した。「ルーカス」はシャヘド136を参考に開発された低コスト自爆ドローンで、価格は約3万5,000ドル(約530万円)程度だ。モジュール設計により爆薬弾頭だけでなく電子戦装備など様々な搭載が可能で、800キロ程度の航続距離と時速180〜200キロの速度を出す。最近の中東地域での作戦でも実戦投入され、高い評価を得ている。もちろん限界も明確だ。速度はトマホークの4分の1程度に過ぎず、弾頭重量も大幅に劣る。ジャミングや対空砲火にも脆弱だ。したがって、自爆ドローンが巡航ミサイルを完全に代替することは難しい。
結局、米国が選んだ解決策は「混合運用」だ。トマホークのような高精度・高威力の巡航ミサイルで最重要目標を排除し、その前段階で大量の自爆ドローンを投入して敵の防空網と資源を消耗させる方式だ。これは過去の精密打撃中心の戦争から、精密性と物量を結合した新しい戦争様式への転換を意味する。現在、米国はトマホークの生産量を10倍に増やすと同時に、自爆ドローンの配備を数十万機規模に拡大しようとしている。二度の世界大戦で「物量戦」により勝利した経験を持つ大国が、再び生産力中心の戦争体制に回帰しているわけだ。今後の戦場はもはや「高価な兵器数発」で決する空間ではなく、安価な兵器数万発がまず投じられる形へと変化している。
















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