
米国のドナルド・トランプ大統領が、イランの発電所や橋など主要な民間インフラへの攻撃を連日示唆していることを受け、米軍の指揮官らが「命令に従うのか、それとも戦争犯罪への加担を拒むのか」という深刻なジレンマに直面していると、英紙ガーディアンが6日付で報じた。
トランプ大統領はこれに先立ち、イランが交渉に応じず、ホルムズ海峡の航行も再開しなければ、米国が同国の発電所や橋を攻撃すると警告し、期限を7日午後8時に設定した。日本時間では8日午前9時に当たる。
ただ、こうした施設を標的にする行為は、国際法上の戦争犯罪に当たり得るとの指摘が強まっている。ジュネーブ諸条約は、電力施設や水道設備など、民間人の生存に不可欠なインフラを故意に攻撃することを禁じているからだ。
ニューヨーク・タイムズも前日、専門家の見解として、送電網や橋など民間インフラを狙った無差別攻撃は国際法で禁じられており、戦争犯罪とみなされる可能性があると伝えた。
元米軍法務官(JAG)のマーガレット・ドノバン氏とレイチェル・ヴァンランディンガム氏は、ジャスト・セキュリティへの寄稿で、そのような威嚇が実際の攻撃に移されれば「最も深刻な戦争犯罪に当たる」と指摘した。あわせて、大統領の発言は兵士らを極めて厳しい立場に追い込むと論じている。
両氏はまた、イランを「石器時代に戻す」としたトランプ大統領の発言や、米国のピート・ヘグセス国防長官による「捕虜も、慈悲もない」との発言について、「明白に違法」であるだけでなく、米兵が長年たたき込まれてきた道徳的・法的原則との断絶を意味すると批判した。
実際、戦争犯罪に当たる命令に従った末、米兵が処罰された例は過去にもある。
1968年、南ベトナムのミライ村で民間人22人を殺害したとして有罪となったウィリアム・カリー中尉は、軍法会議で「村を掃討せよ」とする上官の命令に従っただけだと主張した。これに対し裁判所は、軍人には理性ある人間として行動する義務があるとして、この命令は「明白に違法」であり、免責理由にはならないと結論付けた。
焦点となっているのは、米兵が今後、イランの発電所や橋を爆撃するよう命じられた場合、その命令を「明白な違法」として拒否できるかどうかにある。
ヘグセス長官は就任後、米軍は「戦士の精神」を取り戻すべきだと繰り返し訴え、国際法や交戦規則が部隊を弱くしてきたと批判してきた。軍法務官が前線部隊に過度に厳しい交戦規則を課した結果、敵に利する状況を招いたとも主張している。
さらにヘグセス長官は昨年2月、国防総省の最高位の軍法務官3人を更迭し、高級将校が法的助言を得にくい環境をつくった。その後、ジョー・バイデン前大統領の政権が設けた民間人被害の予防・対応部門も解体している。
昨年11月には、米国のマーク・ケリー上院議員(民主党、アリゾナ州)が、米軍将兵に対し違法な命令には従わないよう呼びかける動画を公開したことを受け、国防総省が軍刑法に基づく立件を視野に調査を進めた経緯もある。
マサチューセッツ大学アマースト校のチャーリ・カーペンター政治学教授はガーディアンに対し、「法が兵士に求めているのは、常識的な判断力を持つ人であれば誤りだと分かるほどの『明白に違法な命令』に限って従わないことだ」と説明した。そのうえで、「判断を誤れば抗命罪で軍法会議にかけられる可能性もある」と警鐘を鳴らした。
同教授はさらに、「とりわけ法のグレーゾーンがある場合、『ノー』と言うことや、戦争犯罪を防ぐために動くことを難しくする要因は多い」と懸念を示している。
一方、トランプ大統領は同日、ホワイトハウスで開かれたイースター・エッグロールの場で、発電所や橋など主要インフラへの攻撃が戦争犯罪に当たる可能性を問われると、「気にしていない」と述べ、懸念を意に介さない姿勢を示した。













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