
インドに世界最多人口の座を譲ったとはいえ、自動車消費大国の地位は今も中国が堅持している。2025年1〜3月期、世界で販売された自動車のうち実に3分の1が中国市場でのものだった。
特に今年1〜4月の販売台数が初めて1,000万台を超えるなど、中国市場は引き続き堅調な成長を続けている。背景には、トランプ米大統領の就任による通商不安の拡大を受け、中国政府が内需拡大のために「以旧換新(古い家電・車両の買い替え)」政策を延長した影響が大きい。
この政策により、2023年8月以降、既存車を廃車して内燃機関車に買い替えると15,000元(約30万3,000円)、電気自動車(EV)に買い替えると20,000元(約40万4,000円)の補助金が支給される。EVは取得税10%も免除されるため、中国ではEV購入が事実上の主流となっている。
2023年7月、乗用車のEV普及率が初めて50%を超えて以降、電動化の波は一段と加速。BYDや吉利汽車(Geely)、小鵬汽車(Xpeng)、理想汽車(Li Auto)などの地場ブランドが勢いを増す一方で、フォルクスワーゲンやトヨタといったグローバル勢の存在感は急速に薄れている。
電動化ブームを追い風に、地場ブランドの台頭が顕著だ。今年1〜4月、中国の乗用車市場で地場勢は前年同期比27.4%増となる594万台を販売し、市場シェアは68.7%に達した。これは前年同期比で8.1ポイントの上昇。2010年代後半まで40%台に留まっていた地場ブランドのシェアは、電動化の進展とともに70%目前まで拡大した形だ。
これに対し、フォルクスワーゲン、トヨタ、GMなど外資勢のシェアは軒並み縮小。ドイツ勢は20%を超えていたかつての水準から13.2%にまで落ち込み、日本勢は9.4%、アメリカ勢は5.8%にとどまった。現代自動車・起亜はわずか1.7%、フランスなど欧州ブランドは1.2%と、存在感を失っている。
4月のデータによると、地場ブランドの乗用車販売に占めるEV比率は72.8%。一方、合弁ブランド(VW・トヨタ等)はわずか6.8%に留まり、差は拡大している。
この潮流は外資メーカーの経営にも影を落としている。フォルクスワーゲンは2030年までにドイツ国内の生産能力を半減、35,000人の人員削減で労働組合と合意。日産も業績悪化を受けて20,000人規模の人員削減を含む構造改革を発表した。現代・起亜はすでに中国市場でのシェアが極めて低く、影響は限定的と見られる。
中国、EV輸出でも世界トップに浮上
中国は自国市場のみならず、海外輸出でも勢力を拡大中だ。今年1〜4月の自動車輸出台数は前年比6%増の194万台を記録。中国は2023年に491万台を輸出して日本(442万台)を抜き、初の世界首位となった。2024年にはさらに586万台へと伸ばし、日本との差をさらに広げている。
今年の特徴はEV輸出の急伸だ。1〜4月のEV輸出は前年比52.6%増の64万台。内燃機関車の輸出が7.9%減少するなか、EVがその落ち込みを補って輸出全体の成長を牽引した。
昨年、欧州連合(EU)が中国製EVに対して最大35.3%の相殺関税を課すなど、世界的な保護主義の動きが強まっていた。それでもEV輸出の伸び率は2023年の6.7%から今年52.6%に急回復しており、中国EVの国際的影響力の強さを示している。
1〜4月の輸出上位5社は、奇瑞汽車(Chery/34.1万台)、BYD(29.3万台)、上海汽車(SAIC/27.1万台)、長安汽車(Changan/20.2万台)、吉利汽車(Geely/14万台)。上海汽車を除けばすべて民間企業が主導しており、国有企業よりも民間勢の躍進が目立つ。
世界EV市場の68%を支配する中国、韓国でも存在感
中国のEVメーカーは、もはや国内に留まらず、グローバル展開を本格化している。CPCA(中国乗用車市場情報連絡会)によれば、2025年1〜3月期の世界EV販売の68%を中国が占めた。EVの普及率は、中国46%、ドイツ24%、ノルウェー75%に対し、アメリカは9.7%、日本はわずか2%。電動化の“地殻変動”を象徴する数字と言える。
世界全体でEV販売が伸びた分のうち、84%が中国由来というデータもある。この分野での影響力が圧倒的であることは疑いない。
BYDは2024年4月、韓国市場においても「アト3」1車種で543台を販売し、価格性能比を武器に存在感を高めている。今やEV戦線における中国の台頭は「茶碗の中の嵐」にとどまらない。世界の自動車勢力図が書き換えられるなか、中国EV産業の今後の動向から目が離せない。
中国の統計をそのまま信じることはできない。BYDの車両火災のことは言わないのか?製造していても実際に販売されているの?