
タイで今年、「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)」の新規感染者が1万3,000人を超え、特に10代と20代前半の若者の感染が急増していることが明らかになった。13日付のVNエクスプレスなどによると、タイのチャイチャナ・デクデチョ保健副大臣は7日の議会で「全体的な感染規模は安定しているが、若者の新規感染は着実に増加している」と述べ、「HIVはもはや深刻な病気ではないという誤った認識と低いコンドームの使用率が主な原因」だと指摘した。
タイ国家医療保障機構(NHSO)によると、これまでに報告されたHIV感染者は計54万7,000人超で、感染が集中しているのはバンコク、チョンブリー、コーンケン、ナコーンラーチャシーマーなどの大都市や観光地であるという。
これを受けタイ保健省は、学校でコンドームの配布拡大や性教育強化、ハイリスクな職業の従事者への健康診断拡大、全国規模のHIV検査体制強化などの対策を講じている。タイ政府は今後、年間の新規感染者数を1,000人以下、HIV関連死者数を4,000人以下に抑える目標を掲げた。ただ専門家は「若者の間でHIVが『治療可能な病気』という認識が広がり、予防より治療に重点が置かれている現状が問題」と懸念を示している。
実際、タイは毎年HIV予防・治療に約84億バーツ(約371億2,028万円)を投じており、その大半は薬剤支援など治療費に充てられている。患者1人当たりの年間治療費は約1万2,000バーツ(約5万4,458円)で、自国民に加え5,700人余りの外国人居住者も支援対象になっている。タイ保健当局は最近の報告書で「今年上半期の新規感染者の大半が15〜24歳の若者で、一部地方では10代の感染率が特に高い」と明らかにした。

HIVはヒト免疫不全ウイルス(HIV、human immunodeficiency virus)を指す。そしてエイズ(AIDS)は、HIV感染により免疫細胞が破壊され、免疫機能が低下することで日和見感染が生じる後天性免疫不全症候群(AIDS)を指す。
HIVに感染すると、体内の免疫細胞である「CD4陽性Tリンパ球 」 がこのウイルスにより破壊され、免疫力が低下する。その結果、様々な感染症や腫瘍が発生し、死に至ることがある。人体の免疫力が低下し、これらの感染症や腫瘍が現れ始める状態をエイズまたは後天性免疫不全症候群という。
HIVに初めて感染した後、早期に診断されなければ、患者自身も感染の事実を知らずに他者にHIVを感染させる可能性がある。ただし、エイズに進行していない段階で治療すれば予後が良いため、早期に患者を発見し治療することが重要である。
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