
AI業界の注目人物であるアンドリュー・タルロック氏が、Meta創業者マーク・ザッカーバーグ氏から提示された総額15億ドル(約2,210億円)規模のオファーを断っていたことが明らかになった。背景には、AIスタートアップ「Thinking Machines」の急成長と、同氏の独立したビジョンがあると見られている。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』の報道によれば、MetaはThinking Machinesの買収を試みたものの失敗。次にザッカーバーグ氏はタルロック氏ら中核メンバー12名以上に直接コンタクトを取ったが、全員が提案を拒否したとされている。タルロック氏に提示された条件は、ボーナスや株式を含め最大15億ドル(約2,210億円)に達する内容だった。
タルロック氏はオーストラリア出身で、シドニー大学を優秀な成績で卒業後、ケンブリッジ大学で数理統計学の修士号を取得。さらにUCバークレーで博士号を取得し、機械学習の専門家としてキャリアを積んだ。
2012年から2023年にかけてMetaに在籍し、機械学習システムの開発において中心的役割を果たした後、OpenAIに移籍。GPT-4の事前学習や推論モデルの開発に関与した実績を持つ。
2024年2月には、OpenAI元CTOのミラ・ムラティ氏と共にThinking Machinesを創業。現在、このスタートアップの企業評価額は約120億ドル(約1兆7,700億円)に達しており、AI分野における急成長企業として注目を集めている。
Meta側はこの一連の報道に対して「事実ではない」と否定し、買収の意向も否定したが、AI分野での人材確保に注力している姿勢は明確だ。Metaは「Meta Superintelligence Labs」を設立し、Scale AIに143億ドル(約2兆1,100億円)を投資して49%の株式を取得。同社CEOアレクサンダー・ワン氏を自社に招き入れるなど、大規模なリソースを投入している。
また、OpenAIからはGPT-01やディープリサーチモデルの開発に関与したジェイソン・ウェイ氏やチョン・ヒョンウォン博士らもスカウトに成功しており、業界では「引き抜き合戦」が過熱している。
OpenAIのサム・アルトマンCEOは内部メッセージで、「Metaは当社のトップ人材の引き抜きに失敗した」とコメントしたとされており、熾烈なAI人材獲得競争の実情が浮き彫りとなっている。
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