
アメリカの上院がステーブルコインを規制する「GENIUS法」を68対30の大差で可決し、暗号資産業界が制度化への第一歩を踏み出した。この法案は、ステーブルコイン市場の急成長を背景に、発行の基準と監督体制を初めて整備した連邦レベルの法律である。
海外メディア「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」によると、今月17日(現地時間)、法案が今後下院で可決されれば、ドナルド・トランプ大統領は8月の議会の休会を前に署名する予定だという。
核心は「1ドルにつき1ドルの準備金」…マネーロンダリング対策の規定も含む
GENIUS法は、ステーブルコインの発行者に対し、流通する1ドル(約145円)相当のトークンごとに現金や米国債など同等の価値を持つ準備金の保有することを義務付けている。そして、500億ドル(約7兆2,519億9,700万円)以上の大規模の発行者は監査済みの財務諸表を公開することや、マネーロンダリング対策(AML)およびテロ資金対策規定の遵守が求められる。
法案は、ステーブルコインを発行しようとするすべての企業に対し、連邦規制当局の承認の下で銀行並みの監督を受けることを規定している。
「サークル」は歓迎、「テザー」は打撃…市場再編の可能性
今回の立法は、最近ニューヨーク証券取引所に上場したアメリカ最大のステーブルコイン発行会社「サークル」にとって大きな勝利と評価されている。一方、海外拠点の「テザー」は法的要件を満たせない可能性が高く、市場での地位が弱まると予想される。テザー側はコメント要請に応じていない。
ビザ、マスターカード、アマゾン、ウォルマートなどの大企業がステーブルコインを基盤とした決済システムの導入を検討している中、明確な規制基盤の整備は機関投資家や事業への参入を加速させると見られている。
トランプ政権との「利益相反」も防止措置を含む
今回の法案には、行政府および議員によるステーブルコイン発行の禁止条項も盛り込まれた。これはトランプ一族の暗号資産事業(World Liberty Financial)がステーブルコインを直接発行している点に対する利益相反防止策と解釈される。ただし、同社への具体的な適用については規制当局の解釈次第だ。
トランプ大統領は最近、暗号資産業界と密接な関係を維持しており、関連業界は昨年だけでスーパーPAC(特別政治活動委員会)に1億7,000万ドル(約246億5,678万円)以上を寄付した。
民主党の内部では「規制強化」と「規制緩和」で分裂
法案可決の過程で民主党内でも対立が生じた。マーク・ウォーナー上院議員(バージニア州)とキルステン・ジリブランド上院議員(ニューヨーク州)などの穏健派は最低限の措置が必要だとして賛成した一方、エリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州)は「金融システム全体を脅かす可能性がある」として反対した。
ウォーレン議員は「ステーブルコインには基本的に必要な安全措置が法案に欠けている」と指摘し、投資家の保護と金融の安定性への懸念を表明した。
ジリブランド議員らは、外国系ステーブルコインに対する要件の強化や非金融企業による発行の制限などの修正案が盛り込まれた後に法案を支持することを示した。
下院で可決されればアメリカが世界初のステーブルコイン規制国に
法案が下院でも可決されれば、アメリカは世界の主要国の中で初めてステーブルコインを連邦法で規制する国となる。ウォール・ストリート・ジャーナルは、これがデジタル通貨競争において中国や欧州連合より一歩先を行く決定的な転機となる可能性があると伝えている。