
米国のドナルド・トランプ大統領の新たな減税法案での電気自動車(EV)に対する7,500ドル(約107万7,896円)の税額控除が、当初の今年末から9月末へと3か月前倒しで廃止されることが決まった。
「トランプ大統領への批判が行き過ぎていた」と一時沈黙していたテスラのイーロン・マスクCEOは、トランプ大統領の減税法案を「完全に正気を失った行為」であり、「米国で数百万の雇用を破壊し、甚大な戦略的損害をもたらす」と再び強く批判した。
30日(現地時間)、ブルームバーグによると、トランプ大統領の減税法案が米上院で審議中に修正が続く中、新たな上院法案では電気自動車と風力、太陽光発電に対する税額控除を前倒しで廃止することが決まった。
新法案では2025年9月30日以降のほとんどの電気自動車販売に対する税額控除を終了するよう草案内容が修正された。9月30日以降は、中古および商用電気自動車の購入に対する税額控除も同時に終了する。
この法案の最終採決は30日(現地時間)の午後まで続く見込みだ。それまでに上院議員らは法案修正のため無制限に修正案を提出できる。修正案の大半は否決されるが、米共和党の上院議員が十分に支持する内容は採択される可能性もある。
トランプ大統領は議会に7月4日までに法案を自身に送付するよう要求した。また下院では、トランプ大統領の署名のためホワイトハウスに法案が提出される前に、最新版の法案について採決を行う必要がある。
米議会予算局(CBO)は、4兆5,000億ドル(約646兆8,535億円)規模のトランプ大統領の減税法案により、今後10年間で米国の国家負債が3兆3,000億ドル(約474兆3,597億円)増加すると試算した。これはまた、米国債に対する海外からの需要を鈍化させる要因となる可能性もある。
一方、メディケイド(低所得者向け医療保険)の段階的廃止については、従来よりもより緩やかに廃止する修正案を支持する方向に傾いている。
法案の核心部分である減税や移民法の執行強化、国防費増額については、ほとんどの共和党議員が広く支持しているが、出身地域やイデオロギーによって見解が分かれる場合も多い。
保守派はより大規模な支出削減を要求しているが、穏健派はメディケイドやフードスタンプ(食料費補助措置)などの社会保障プログラムの削減幅を抑えるべきだと主張している。また、再生可能エネルギー産業が盛んな州の一部上院議員は、環境に配慮したエネルギー税額控除の急速な廃止を緩和することを望んでいる。
ブルームバーグによると、最新の修正版でメディケイドは穏健派の支持を得る一方、再生可能エネルギーでは保守派の支持を得る方向で修正されたと分析されている。この法案に対し、民主党上院議員のほとんどが反対しており、共和党議員が3人以上反対すれば可決されない可能性がある。
トランプ大統領は、地域の利害関係などを理由に法案への支持を拒否した議員らを引き続き攻撃している。法案の審議開始に反対した2人の共和党議員のうち1人、ノースカロライナ州選出のトム・ティリス議員に対しては、対抗馬となる共和党の候補を探すと脅した。
一方、トランプ大統領の減税法案を批判した後、しばらく沈黙していたマスクCEOは28日、自身のSNSを通じてこの法案を「完全に正気を失った破壊的な行為」だと強く非難した。
マスクCEOが率いる電気自動車メーカーのテスラは、エネルギー部門でバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)と太陽光発電システムも製造・販売・設置している。この法案では太陽光、バッテリー、地熱、風力、原子力エネルギープロジェクトへの課税を強化し、電気自動車への補助金を前倒しで廃止することから、最も大きな打撃を受ける企業の一つがテスラだと見られている。
マスクCEOはSNSのX(旧Twitter)で「上院法案の草案は米国で数百万の雇用を破壊し、米国に甚大な戦略的損害を与えるだろう」と述べた。彼はこの法案を「過去の産業に恩恵を与え、未来の産業に深刻な打撃を与える完全に正気を失った破壊的な法案だ」と強く批判した。
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