ファウンデーションモデルチーム(基盤モデル)を率いたルーミン・ファン氏がメタへ転職、AI人材流出加速か
最大1億ドル(約146億8,650万円)の年俸を提示し、各所でAI人材を積極的に獲得しているメタが、アップルの中核AI人材の引き抜きに成功した。AI市場での出遅れが指摘されるアップルが、この事態をどう乗り越えるのか注目されている。
8日、ブルームバーグによると、アップルの大規模言語モデル(LLM)開発を主導してきたルーミン・ファン氏が近いうちにメタに移籍する予定だという。
2021年にグーグルからアップルへ移籍したファン氏は、約100人規模の「アップル・ファウンデーションモデル(AFM)」チームを率いるシニアエンジニアとして、アップルのインテリジェンスとデバイス内AI機能を実現する中核モデルの開発を牽引してきた。

しかし、メタが最近数千万ドル規模の年俸を提示したことで、ファン氏は転職を決意した。後任には中国系AI専門家のジーフェン・チェン氏が有力視されており、AI関連の組織構造も見直される見通しだ。
ブルームバーグは、「これまでほとんどのエンジニアがファン氏に直接報告していたが、今後は中間管理職を介した垂直的な組織構造に移行する」と伝え、「中間管理職にはチェン・ワン氏、ジールイ・ワン氏、チョンチェン・チュー氏、グオリー・イン氏らが挙げられている」と報じている。
業界では、ファン氏の離脱はアップルのAI戦略の遅れとそれに伴う市場評価の低下が背景にあるとみられている。アップルは最近開催された年次世界開発者会議(WWDC25)で新たなAI機能を発表したものの、その多くが競合のサムスン電子が昨年発表した機能とほぼ同様で、失望を招いた。長年にわたり、アップルは競合他社に比べてAI開発に関する人材が少なく、大規模言語モデル(LLM)学習に必要な高性能GPUの確保も十分とは言えない状況にある。
これを受けてアップルは、AI技術の不足を補うため「閉鎖的な運営方針からの脱却」に取り組んでいる。昨年のWWDCでOpenAIとの協業を発表し、最近では「Claude」を開発したAnthropic社と提携して「Siri」の新バージョン開発を進めていると伝えられている。さらに、スマートフォンOSで競合するグーグルともAI分野での協力を検討しているという。
しかし、ファン氏の転職をきっかけに、アップルではAIの中核人材の流出が加速し、さらなる危機に直面する可能性が高い。既にファン氏と共にAI業務を担当していたトム・ガンター氏も先月アップルを離れたとされている。
ブルームバーグは、「今後もアップルからさらなる人材流出が続く可能性がある」と指摘し、「今回の件は単なる人事異動を超え、アップルのAI戦略全体に構造的な課題を突きつけている」と分析している。
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