
ロシアが無人機(ドローン)の大量生産を本格化させる中、ウクライナに対して最大2,000機のドローンを同時投入する「飽和攻撃」が現実味を帯びてきた。ドイツ国防省の関係者が警告を発している。
独国防省ウクライナ対応状況室のクリスティアン・プロイディング室長は20日(現地時間)、テレビインタビューで「ロシアは低コストかつ大量の無人機を一斉投入する能力を急速に拡大中だ」と指摘。「ウクライナの防空網は深刻な圧力を受けることになる」と述べた。
特に問題視されるのは、攻撃あたりのコストの非対称性だ。イラン製「シャヘド」ドローン1機の価格は約3万〜5万ユーロ(約520万~860万円)にすぎないのに対し、これを迎撃するパトリオットミサイル1発は500万ユーロ(約8億6,220万円)を超える。プロイディング氏は「迎撃コストを1回あたり2,000〜4,000ユーロ(約34万~69万円)に抑える対処手段が不可欠だ」と語った。
さらに同氏は、ウクライナ側の「戦略的反撃」として、ロシア本土にあるドローン工場や軍事基地、関連インフラを直接攻撃する必要があると主張。「生産拠点そのものを叩かなければ、物量の波に飲まれる」と強調した。
注目すべきは中国の動きだ。最近、中国がドローン部品の輸出先をウクライナからロシアへと切り替えたことで、ウクライナの調達網に深刻な支障が出ているという。プロイディング氏は「中国の政策転換によって、ウクライナは重要部材の確保に苦しんでいる」と述べた。
今月15日には、ウクライナ軍がロシアの「3万機目」となるシャヘドを撃墜したと発表。タタールスタンのアラブガ工場で製造されたもので、機体には「Ы30000」と刻まれていたという。
国防専門メディア『ディフェンス・エクスプレス』によると、同工場では2025年上半期だけで1万8,000機以上のドローンが生産されたと推定されている。ロシアのドローン戦力は、すでに「消耗戦のフェーズ」から「質より量」の新たな局面に突入しているとみられる。
ドイツ国防省は「ウクライナの防空体制を維持・強化するには、西側諸国の技術的・戦略的支援が不可欠」とし、警戒感を一段と強めている。
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