今月、中国・広西チワン族自治区で初の合同訓練
ベトナム戦争50年記念パレードにも中国軍が参加

領有権をめぐって南シナ海で対立してきた中国とベトナムが、初めて陸軍による合同軍事訓練を実施する。
アメリカが世界的な相互関税を発表してから12日後の今年4月中旬には、習近平中国国家主席がベトナムを訪問し、「一方的な圧力に対抗しよう」と呼びかけていたが、今回の訓練はその成果の一つとみられている。
中国国防部は20日の声明で「7月中旬から下旬にかけて、中国・広西チワン族自治区でベトナムと合同軍事訓練『手を取り合って歩む2025』を行う予定だ」と明らかにしたうえで、「中国とベトナムが国境地域での合同軍事訓練は両国にとって初めてで、軍事協力を一層深めることを目的としている」と説明している。
これまでにも中国とベトナムはトンキン湾で合同海上パトロールを実施したことはあるが、陸軍による合同訓練は初となる。
今年で国交樹立75周年を迎える中国とベトナムは、軍事協力を強化する動きを見せており、4月30日には中国人民解放軍が、ベトナム統一50周年を記念してホーチミンで開かれた最大規模の軍事パレードに初めて参加した。
ベトナム戦争は、アメリカが派兵した戦争としては事実上初めて敗北した事例とされ、社会主義陣営にとっては象徴的な勝利と位置づけられている。
ドナルド・トランプ米大統領の二期目就任後、ベトナムはアジアで最初にアメリカと貿易協定を結んだ。

この通商協定により、ベトナム製品に対する関税は当初の46%から20%へと大幅に引き下げられた一方で、ベトナムを経由する製品には40%の高関税が課され、中国を標的にした措置と受け止められている。なお、米国製品には無関税が適用される。
トランプ政権一期目の米中貿易戦争では、多くの企業が製造拠点を中国からベトナムへ移し、高関税の回避を図っていた経緯があるが、今回の40%関税は「ベトナム経由の中国製品ルート」を封じる狙いがあるとみられている。
米国とベトナムの貿易協定に関して、中国政府は直接的なコメントを避けているが、国営メディアは警戒感を隠さなかった。
中国の国営紙グローバル・タイムズは、ベトナムにおける対米関税政策について「公平性とはかけ離れている」と指摘し、「覇権的な振る舞いは、東南アジアで米国のさらなる困難を招きかねない」と警鐘を鳴らしている。
一方で、南シナ海での中国とベトナムの領有権をめぐる対立は、水面下に沈静化しつつあるという。
先月、中国のシンクタンク「南シナ海戦略態勢感知計画」は、ベトナムが領有権を争うスプラトリー(中国名で南沙)諸島で埋め立てを継続していたと発表したが、飛行場建設を目的とするこの活動に対して、中国側は異例の沈黙を保っている。
今回の合同軍事訓練をめぐっては、ベトナムが掲げる「竹外交」が、米中対立のはざまで発揮されたとの見方も出ている。
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