
欧州連合(EU)は24日(現地時間)、米国との関税交渉が決裂した場合に備えた報復関税の発動準備を完了した。
現地メディアによると、EU27カ国は同日、欧州委員会が提案した総額930億ユーロ(約16兆1,529億3,705万円)規模の対米関税案を最終承認したという。採決ではハンガリーを除く26カ国が賛成した。
承認された報復関税案は、欧州委員会が当初用意していた210億ユーロ(約3兆6,474億9,000万円)の第1次措置と、720億ユーロ(約12兆5,056億8,000万円)の第2次措置を統合したもので、航空機、自動車部品、バーボンウイスキーなど米国製主要品目への追加関税が柱となっている。
EUは本案を直ちに発動せず、8月1日までにドナルド・トランプ米大統領が表明した相互関税率30%の引き下げによる妥結が成立しない場合、同月7日から報復関税を実施する方針とした。
今回の採決は、EU産品に15%の関税を課す方向で米国との貿易妥結の可能性が高まるとの見方の中で実施された。フィナンシャル・タイムズ(FT)およびウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、米EU双方は、ほぼ全てのEU産品に15%の関税を適用し、航空機や医療機器など一部品目を免除する案について最終協議を進めているという。
現時点で米国に輸出されるEU産品には、平均4.8%の既存関税に加え、トランプ大統領が導入した10%の「基本関税」が上乗せされている。欧州委員会は、15%での妥結が実現した場合、実質的に現状と同等の水準にとどまると加盟国に説明している。15%の関税率は、米国が日本と締結した協定と同水準にある。
欧州委員会は当初、10%の基本関税を「違法」との立場から受け入れを拒否していたが、30%関税の回避を優先し、15%での妥結を「次善の策」として容認する姿勢に転じたとされる。
一部では、EUが強力な経済基盤と貿易防衛手段を有しながら、対米交渉で十分に活用できなかったとの批判が出ている。EUの通商脅威対応措置(ACI)は、強力な対外報復手段として一部で「貿易バズーカ砲」とも称され、第三国がEUまたは加盟国に通商上の脅威を与えたと判断された場合、サービス、外国直接投資、金融市場、公共調達、知的財産権などの分野で制限を課すことが可能とされる。ただし、これまでに発動された例はない。
一方、フランスはトランプ大統領による30%関税の予告直後、ACIの発動準備に着手すべきだと主張したが、EUの執行機関・欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は「発動準備の段階にはない」として退けた。
また、EUはトランプ政権による包括的な関税措置の開始当初から報復準備に着手していたが、加盟国間の意見対立や対米関係への配慮から計画の修正と延期を繰り返し、結果的に交渉力を弱めたとの指摘も出ている。
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