
オーストラリアで開発された協働戦闘無人機(ロイヤルウィングマン)MQ-28「ゴーストバット」に、将来的に空中給油能力が搭載される可能性があることが指摘されている。軍事専門家は、これにより航続距離の延長にとどまらず、長時間の滞空や作戦の柔軟性において画期的な転換点になり得ると評価している。
米国の軍事専門メディア「ウォーゾーン(TWZ)」は8日、ボーイングが公開したプロモーション映像の中で、MQ-28の機体上部に空中給油口とみられる金属パネルの線や塗装が確認できる場面があると報じた。この形状はF-22やF-35A戦闘機の空中給油口に類似しているという。ただし、ボーイング側は「当該映像は概念的な資料」として慎重な姿勢を示している。
長距離作戦遂行の制約解消へ


MQ-28はボーイングのオーストラリア子会社がオーストラリア空軍向けに開発した機体だが、米国やポーランドにも提案されている。特にオーストラリアはインド太平洋地域での長距離作戦に制約がある「距離の専制(tyranny of distance)」の問題を抱えており、空中給油能力がその解決の鍵になると見られている。
現在、MQ-28の航続距離は約3700kmとされ、空中給油が可能となれば長時間の作戦地域滞空や、再給油後の別地域への即時投入なども想定される。
武装・センサー運用能力の拡大

ボーイングが公開した映像には、無人戦闘機 MQ-28 が AIM-120アムラーム(先進中距離空対空ミサイル) 2発を内部兵器倉に搭載した状態を想定した場面が含まれている。機体外部からは武装が確認できないが、F-15EX戦闘機 の後席に搭乗する副操縦士がディスプレイを操作すると、画面に「AIM-120アムラーム」と表示され、MQ-28の武装運用の概念が間接的に示された形だ。

また、機首前方に 赤外線捜索追尾装置(IRST) を搭載した場面も映像に含まれている。IRSTはステルス機の探知に有利で、電子戦による妨害を受けにくい受動型センサーであることから、無人機にとって「静かな目」としての役割を果たすことができる。
オーストラリア空軍はすでに一部機体でIRSTの搭載試験を実施しており、将来的には多数の MQ-28 を「センサーノード」(情報収集・伝送の拠点)として活用し、有人戦闘機を支援する戦術構想を進めている。
空中給油技術の課題
オーストラリア空軍は エアバスA330MRTT(KC-30A)を保有しており、ボーイングが提示するブーム方式の空中給油にも対応可能だという。さらに、米空軍が推進する次世代協働戦闘機(CCA)構想においても空中給油は重要要素として位置づけられている。
ただし、無人機に給油能力を追加すれば、設計の複雑化やコスト上昇を招くうえ、すでに逼迫している空中給油戦力への負担が増すことから、今後も議論が避けられないとみられる。

実際、空中給油作戦の難易度は高く、米軍の最新空中給油機KC-46ペガサスは2022~2024年の間に、給油ブームが戦闘機の燃料口に引っかかり破損する事故を3回経験し、総額2,200万ドル(約32億4,193万円)の損害が出ている。昨年にはブームが折れ、カリフォルニアの森に落下する事例もあった。このため、MQ-28のような無人機との安全な空中給油の実現は、単なる概念を超えた技術的課題となる可能性がある。
世界市場への展開も視野

ボーイングはMQ-28をベースに、プローブ・アンド・ドローグ方式による給油も可能と示唆している。この方式は戦闘機側のプローブを空中給油機のドローグ(ホース末端の漏斗状装置)に差し込み燃料を供給するもので、主に米海軍や北大西洋条約機構(NATO)加盟国の空軍が運用している。構造が単純で活用範囲が広く、英国や米海軍は空母運用可能なMQ-28派生型にも関心を示しており、世界市場への展開も見込まれている。
追加導入は年内判断か

MQ-28は現在、オーストラリアでブロック1の試作機8機が納入済みで、改良型ブロック2が試験中だという。ボーイングはすでに150時間の実機飛行試験と2万時間以上の仮想環境試験を完了しており、年末から来年初めには初の空対空ミサイル実射も予定されている。
オーストラリア政府は年内にMQ-28の追加導入を判断する予定で、空中給油機能の実装が進めば、ゴーストバットの戦略的価値は大きく向上するとみられる。
コメント0