
中国が防衛産業の核心金属であるゲルマニウムの輸出を制限したことにより、価格が14年ぶりの最高値に達し、グローバル防衛産業界に非常事態が生じた。15日(現地時間)のフィナンシャル・タイムズ(FT)によると、価格報告機関「ファストマーケッツ」は、ゲルマニウムの価格が10日を基準として㎏当たり約5,000ドル(約73万5,152円)まで急騰したと発表した。これは2023年初頭の1,000ドル(約14万7,030円)水準から急上昇し、2011年以来の最高値となった。
ゲルマニウムは、戦闘機などの軍事装備に搭載されるサーマル・イメージング・システムの製作に不可欠な金属である。かつて世界のゲルマニウム生産の60〜70%を担っていた中国は安定供給を続けていたため、各企業は大規模な在庫を確保していなかった。しかし、中国は2023年、米国とオランダが先端半導体・装置の輸出を制限した影響を受け、ゲルマニウム、ガリウム、アンチモンの輸出停止を発表した。トレーダーやアナリストは、実際の輸出急減が昨年末から本格化したと指摘している。
小規模金属トレーディング会社「Strategic Metal Investments」のテレンス・ベル氏(Terence Bell)は「中国からの出荷が完全に途絶え、少なくとも6か月間はゲルマニウムの調達が困難になった。夏の間、1日につき2〜3件のゲルマニウムに関する問い合わせが殺到し、市場は切羽詰まっている」と述べた。トレーディング会社「Tradium」のクリスティアン・ヘル氏(Christian Hell)も「米国や欧州から問い合わせが相次いでおり、市場はパニック状態で全ての問い合わせに対応しきれない状況だ」と報告した。
小規模金属トレーディング会社「Lipmann Walton & Co.」のトレーダー、アーロン・ジェローム氏(Aaron Jerome)は「中国の制限措置が正常な現物市場の機能を破壊した」と語り、「以前は100㎏の調達が常だった供給元から、現在は10㎏の入手が幸いで、価格は3〜4倍に跳ね上がった」と説明した。

レアアースと同様、ゲルマニウムは世界的に希少というより、経済的かつ実用的に抽出が困難な金属である。主に亜鉛鉱石や石炭の副産物として生産される。ロシアもかつてはゲルマニウムの供給国であったが、ウクライナ侵攻以降、西側諸国の制裁により供給が減少している。このような中、米防衛産業大手「ロッキード・マーティン」は8月、韓国の「高麗亜鉛」とゲルマニウムの供給契約を締結した。ジェローム氏は「過去、防衛産業企業がゲルマニウムの購入を下請けに委ねていた点を考えると、今回の契約は市場の苦境を示すサインだ」と評価した。
中国依存度を低減するための代替供給網確保の動きも活発である。米フロリダ州の 「LightPath Technologies Inc.」 は政府の支援を受け、代替品の開発に着手した。ベルギーの電池材料企業「ユミコア」、カナダの鉱山企業「Teck Resources」、ならびに「Trafigura」傘下の「Nyrstar」などが、中国以外の地域でゲルマニウムを生産している。特にNyrstarは、米テネシー州の亜鉛製錬所においてゲルマニウム・ガリウムの回収および加工施設の建設を検討している。
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