
アメリカのドナルド・トランプ大統領の政権は4日、中国によるレアアース(希土類)や重要鉱物の独占に対抗するとして、同盟国と「貿易ブロック」を組み、価格下限制度を導入すると表明した。一方、現地の専門家からは、この構想だけで中国の牙城を崩すのは難しいとの見方が相次いでいる。鉱山開発そのものより高度な精製(Processing)技術の差に加え、環境規制や資金支援の複雑な要件など、構造的な課題が積み重なっているからだ。
「掘るより洗うのが問題」…精製工程がボトルネック
J・D・ヴァンス米副大統領は同日、ワシントンD.C.の国務省で開かれた重要鉱物の閣僚級会議で、同盟国の自立に向けた共同対応を呼びかけ、価格下限制度の導入を正式に打ち出した。中国のダンピング(低価格攻勢)で鉱物価格が急落しても、関税などを組み合わせて、同盟国側の企業が過度な損失を被らず事業を継続できる最低水準の価格を政府が下支えする仕組みである。
ただ、分析担当者の反応は厳しい。オーストラリアの鉱山業界に詳しい分析機関ディスカバリー・アラートは、米側の戦略が採掘に重心を置く一方、真のボトルネックである精製工程を軽視していると指摘した。
中国は世界のレアアース採掘の約70%を占めるとされるが、磁石や電池材料へつなぐ分離・精製工程では90%以上の支配力を握るとみられる。ディスカバリー・アラートは、レアアースの分離工程には複雑な溶媒抽出に加え、温度やpHを精密に制御する運用が欠かせず、中国は数十年をかけてノウハウを蓄積してきたと分析している。
一方、アメリカは関連技術や熟練人材が大幅に不足するという。報告書によると、精製施設の建設と技術の安定化だけでも一般に5~7年を要し、さらに磁石製造へつなげるには追加で2~3年かかる見通しだ。アメリカ政府が掲げる18~24か月でのサプライチェーン安定化は現実的ではなく、トランプ大統領の任期内に目に見える成果を出しにくいとの悲観論につながっている。
資金支援の条件と環境規制が、かえって足かせに
政府支援の設計にも実効性への疑問が残る。米大手法律事務所ベーカー・ボッツは4日、トランプ政権が発表した「プロジェクト・ボールト」が総額120億ドル(約1兆9,000億円)規模に上る一方で、現場の企業にとっては「絵に描いた餅」になりかねないと警鐘を鳴らした。
同事務所によれば、支援を受けるには原産地の追跡、労働基準、厳格な環境・社会・ガバナンス(ESG)要件を満たす必要があり、中国製の低価格品と競争する新興企業ほどコスト負担が膨らみやすい。支援が厚いほど条件も重くなり、立ち上がり期の企業の体力を削る可能性がある、という見立てだ。
環境規制も国内供給網の構築を難しくする要因とされる。レアアースの精製工程では多量の汚染物質が発生し得るが、中国と比べてアメリカは規制が厳しく、結果として生産コストを押し上げやすい。ベーカー・ボッツは、中国が価格を大きく引き下げれば、芽生えつつある米国内の精製企業を倒産に追い込める「略奪的な価格決定力」をなお手放していないと分析した。
こうした事情から、仮に「貿易ブロック」で関税障壁を築いても、技術格差と環境規制、中国の垂直統合型の独占構造を短期間で崩すのは難しいとの見方が優勢となっている。トランプ大統領が就任から1年が過ぎても、対中関税をめぐる圧力の強度を同盟国の動きと見比べながら慎重に調整しているのは、任期内に中国依存を断ち切るのが容易ではない現実を織り込んでいるためだ、との指摘も出ている。
米外交問題評議会(CFR)も最近の報告書で、従来型の採掘・精製の延長線だけでは中国に追いつけないとして、技術革新やリサイクルの活用など、別ルートからの打開策を組み合わせる必要があると提言した。
















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