
米国と中国が台湾問題を巡って武力衝突に発展した場合、オーストラリア西部の海軍基地が、米軍の原子力潜水艦にとって極めて重要な前進拠点になるとの見方が強まっている。
米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」は、米国防総省が対中抑止力を強化するため、オーストラリア西部に位置する「HMASスターリング」海軍基地に、最大4隻の原子力潜水艦を巡回駐留(ローテーション配備)させる計画だと報じた。この配備は、米・英・豪の3カ国による安全保障枠組み「オーカス(AUKUS)」合意の一環として実施されるもので、2027年にも最初の潜水艦が到着する予定である。
米国が同基地を重視する背景には、戦略的なリスク分散(リスクヘッジ)の意図が鮮明である。現在、米国はグアムに原子力潜水艦を配備しているが、対中紛争が現実化した場合、開戦初期に中国のミサイルによる「飽和攻撃」を受け、グアムの軍事施設が機能不全に陥る懸念が指摘されてきた。これに対し、西オーストラリア州の「スターリング基地」は、中国本土から相対的に距離があり生残性が高い一方で、南シナ海やインド洋へのアクセスにも優れていると評価されている。
米潜水艦部隊を指揮するリンカーン・リーフステック海軍准将は、同基地を訪問した際、「交戦中に艦船が損傷した場合、修理後速やかに戦線復帰することが不可欠だ。西オーストラリアの地理的優位性は、グアムやハワイの機能を補完し、米海軍の即応性を一段と高めるだろう」と強調した。
オーストラリア政府は同基地に対し、56億ドル(約8,600億円)を投じて訓練センターや潜水艦桟橋、放射性廃棄物処理施設などの整備を進めている。同国は自国領内への外国軍の「恒久基地」設置を認めない原則を維持しているため、今回の配備は公式には「巡回駐留」と位置づけられる。しかし、米英の軍人ら約1,200人が同地域に移動する見込みであり、実質的には長期駐留に近い形態となる。
一方で、課題も山積している。オーストラリアには原子力潜水艦の運用・整備経験がなく、2030年代初頭までに高度な技術基盤を構築できるかは不透明である。また、地元の政治家や住民からは、安全保障リスクの増大や放射性廃棄物処理への懸念も噴出している。マルコム・ターンブル前首相は、「自国の潜水艦が存在しない状況で米国の基地を受け入れることは、豪州の主権を著しく損なう」と厳しく批判している。
これに対し、賛成派のマイケル・グリーン氏(シドニー大学米国研究センター所長)は、「中国のミサイル射程圏から十分に離れたこの拠点は、実際の戦争において決定的な差を生む可能性がある」と述べ、戦略的妥当性を主張している。
















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