
イランの弾道ミサイルの最大射程が、従来知られていた水準の約2倍に当たる4,000キロに達することが明らかになり、欧州に緊張が走っている。イランからは英国のロンドン、フランスのパリ、ドイツのベルリンなど主要国の首都が射程圏に入るためだ。とりわけ、北大西洋条約機構(NATO)の支援を受けずに自力でミサイルを防衛できない英国では警戒感が強まっている。ただ、英国政府は22日(現地時間)、イランが英国を標的にしている具体的な兆候はないとの立場を示した。
脅威が表面化したのは、イランが20日、本土から約4,000キロ離れたインド洋のディエゴガルシア英米共同軍事基地に向けて弾道ミサイル2発を発射したためだ。1発は米軍艦の防空網で迎撃され、もう1発は飛行に失敗したものの、イランが初めて長射程の弾道ミサイルを発射した点で衝撃が広がった。国際社会の核監視を受けてきたイランは、これまでミサイルの射程を2,000キロに制限していると公言してきた。
もちろん、弾頭の重量を減らして先端部を軽くし、射程を延ばすこと自体は技術的に可能だ。しかし今回の攻撃により、イランが長射程ミサイルを水面下で開発していた可能性が浮かび上がった。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は22日、イランのミサイルは欧州の奥深くまで到達する能力を備えていると述べ、欧州側の危機感をあおった。
これに対し英国政府は直ちに沈静化に動いた。英国のスティーブ・リード住宅・地域社会相は同日、BBCに対し、イランがロンドンまで届く長距離ミサイルを保有しているというイスラエル側の主張を裏づける根拠はないと説明したうえで、イランが英国を標的としているとの具体的な評価も存在しないと明らかにした。
戦争序盤には関与に慎重だった英国も、キプロスにある自国空軍基地がイランの無人機(ドローン)攻撃を受けたことを機に、戦闘機などの戦力を投入した。20日には、米軍によるディエゴガルシア基地とイングランド南西部のフェアフォード基地の使用も認めた。ただ、ディエゴガルシアへのイランのミサイル攻撃は、その使用許可より前に行われたと伝えられている。
ドイツと異なり弾道ミサイル防衛網がない
英国紙テレグラフは、元軍高官らの話として、英国にはイランの弾道ミサイルを迎撃できる地上配備型の防空システムが存在しないと報じた。米国製パトリオット防空システムを運用するドイツとは事情が異なるという。代替手段としては海軍の45型駆逐艦があるが、その多くは港に停泊しており、不意のミサイル攻撃に即応するには限界があるとの見方が出ている。
元英国空軍准将のショーン・ベル氏は、英国には現時点で弾道ミサイル防衛の手段が全くないと指摘し、冷戦期には攻撃を十分防げたものの、その後は投資不足で防空網が弱体化したと批判した。
一方で、直ちに最も差し迫った脅威とみるべきではないとの反論もある。英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)のシダース・カウシャル上級研究員は、イランが英国に届くミサイルを保有している可能性はあるとしながらも、英国の空域に進入するには防備の厳しい空域を通過しなければならないと説明し、最優先の脅威ではないとの認識を示した。
また、脅威を過度に膨らませようとするイスラエル側の意図を警戒すべきだとの声もある。英国の退役陸軍大将で、元NATO欧州連合軍副最高司令官のリチャード・シレフ氏は、イスラエルの主張は真剣に受け止める必要があるとしつつも、できるだけ多くの国を戦争に引き込みたいという思惑がイスラエル側にある点も忘れてはならないと強調した。













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