
超電導モーターを搭載したトヨタの水素エンジン車「TGRR GR Corolla H2 concept」(水素エンジンGRカローラ)が24時間耐久レースを完走した。自動車への超電導技術の世界初応用に加え、レース完走によってその耐久性も証明された。現在量産・販売中の燃料電池車(FCEV)ミライとともに、従来の内燃機関を活かした水素エンジン車の普及に向けた動向が注目を集めている。
水素エンジンGRカローラは、6日から7日にかけて静岡県富士スピードウェイで開催された「ENEOSスーパー耐久シリーズ2026 第3戦 NAPAC富士24時間レース」に、32号車としてST-Qクラスへ出場した。
24時間で平均時速110kmを維持しながら合計483周を走行。1周4.563kmのサーキットを走り続け、総走行距離は2,203kmに達した。第3戦完走という当初の目標を達成したのはもちろん、昨年のレースより15周(約68km)多く走り、参戦6年目で歴代最長記録を更新した。
トヨタの豊田章男会長は「水素エンジンGRカローラの歴代最長走行記録達成を祝う」としたうえで、「未来への扉はまだ完全には開かれていないが、このような長い走行距離が未来につながる道になると信じている」と述べた。
豊田会長は今回、モリゾウ(MORIZO)のドライバー名でトヨタガズーレーシング(TGRR)チームに正式エントリーし、長男を含む計4人のドライバーと交代しながら、自らも70周を走行した。
「GRカローラH2」超電導でパッケージ効率化…液体水素「ボイルオフ」現象、克服課題に
水素エンジンGRカローラは、エンジン内で水素を直接燃焼させて動力を得る内燃機関方式を採用している。トヨタの量産FCEV「ミライ」が水素から電気を生成してモーターを駆動する電動方式とは異なり、カーボンニュートラルを実現しながらも排気音やエンジン振動といった従来の内燃機関ならではの走行感覚を維持できる。
2021年の第3戦ST-Qクラスへの参戦を皮切りに毎年同じレースに出場し、水素エンジンの改良を重ねてきた。2023年からは水素の形態を気体から液体に変更して水素容量を増大させ、燃料タンクからエンジンへ水素を送るポンプの耐久性向上にも取り組んできた。
今大会では、液体水素ポンプの駆動モーターを通常の電動モーターから超電導モーターへ刷新して臨んだ。マイナス253℃という液体水素の極低温特性を活かし、別途冷却装置を設けることなく電気抵抗をゼロにする超電導状態を実現した。
これによりタンク外に置かれていたモーターユニットをタンク内に収めることが可能となり、パッケージ効率が向上した。水素タンク容量は300Lと従来の1.3倍に拡大し、搭載できる水素量も15kgから20kgへと増加した。
搭載水素量が増えたことで、1回の充填あたりの航続距離の延長も期待されていた。今回の第3戦完走と並ぶ第2の目標として、航続距離を従来の30周から40周へ伸ばすことを掲げていた。ただ、今回のレースで実際の航続距離がどれほど伸びたかは、まだ確認されていない。
超電導技術の実戦投入は、課題の連続でもあった。計画していたタンク交換作業に約4時間を要し、その後も変圧器のトラブルで車両が停止する場面があった。それでもTGRRチームのエンジニアたちの奮闘により、最終的には歴代最長となる走行距離での完走を果たした。
実用化に向けてはなお課題も残る。その代表例が、液体水素が気化する「ボイルオフ(Boil-off)」現象だ。現在、水素ポンプ内の超電導モーターは京都大学との共同開発により回転型として実現している。パッケージ効率向上のためモーターユニットをタンク内に格納した一方で、回転型モーターの動作が液体水素をかき混ぜてしまうため、ボイルオフ現象が悪化するという問題が生じた。このためタンク容量の増加分を燃焼に十分活かしきれていない状況だ。
トヨタは京都大学および鉄道総研(公益財団法人鉄道総合技術研究所)との技術協力により、超電導モーターを回転型から直線運動を行うリニア型に転換することでボイルオフ現象の最小化を図る方針だ。













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