気候変動に伴う気温上昇で、これまで寒さからマダニのリスクが比較的低いとされてきたカナダで、マダニの生息域が広がっている。
マダニが媒介する感染症の報告数が急増する中、インターネット上では「政府が空からマダニを散布している」といった根拠のない陰謀論まで広がっている。

気候変動に伴う気温上昇で、これまで寒さからマダニのリスクが比較的低いとされてきたカナダで、マダニの生息域が広がっている。
マダニが媒介する感染症の報告数が急増する中、インターネット上では「政府が空からマダニを散布している」といった根拠のない陰謀論まで広がっている。
マダニの生息域が広がり、ライム病報告数が急増している
カナダ公共放送CBCなどによると、感染症を媒介する外来種のマダニは、米国との国境を越え、毎年35〜55キロのペースでカナダ北部へ生息域を広げている。
カナダ・グエルフ大学のケイティ・クロウ教授は「カナダの人口の大半が暮らす米国国境付近は、すでにマダニが生息するのに適した気候条件になっている」と指摘した。その上で「まだマダニが確認されていない南部の一部地域も、今後10年以内に生息地になる可能性がある」と警告している。
特に懸念されているのが、ライム病を媒介するクロアシマダニ(シカダニ)の拡大だ。1989年にオンタリオ州南部で初めて確認されて以降、現在ではカナダ各地に広がっている。
カナダの保健当局の統計では、2009年に144件だったライム病の報告数は、2025年には暫定で7,105件に達した。16年でおよそ50倍に増えたことになる。専門家は、実際の感染者数は統計よりさらに多い可能性があるとみている。

ライム病は治療が遅れると合併症が出ることもある
ライム病は、ボレリア菌を持つマダニに刺されることで起こる感染症で、米国北東部などで多くみられる。
マダニは主にシカや小型のげっ歯類などの動物に付着して移動する。人がボレリア菌を持つマダニに刺されると、菌が体内に入り、皮膚や神経、関節などに症状を引き起こすことがある。
ライム病は早期に治療すれば多くの場合は回復する。一方で、診断が遅れたり、抗生物質による治療が十分に行われなかったりすると、合併症が出ることもある。
その場合、治療後も疲労感や筋肉・関節の痛み、神経症状が長く続くことがあり、まれに命に関わるケースもある。
夏の長期化と森林開発がマダニの拡大を後押ししている
専門家は、マダニの急増には気候変動の影響が大きいとみている。
かつてのカナダでは、冬や春の寒さが厳しく、マダニが活動しにくい環境だった。しかし近年は春の訪れが早まり、夏が長くなったことで、マダニが吸血・繁殖できる時期が長くなっている。
クロウ教授は「毎年、数百万匹のマダニが渡り鳥やシカ、げっ歯類などに付いてカナダへ入ってくる」と説明した。「マダニは落ち葉の下に隠れれば厳しい寒さにも耐えられる。冬が寒いから死ぬというわけではなく、夏が長くなって繁殖しやすくなっていることが問題だ」と続けた。
都市近郊で住宅開発が進み、森林が分断されていることも一因とされる。緑地が細かく分かれることで、マダニの宿主となるシカやネズミなどが住宅地に入り込みやすくなり、人との接触機会も増えているという。
根拠のない陰謀論も広がっている
マダニの増加を受け、最近では「TikTok」などのSNSで「政府が飛行機からマダニをまいている」とする根拠のない動画も拡散している。一部の動画は20万回以上再生されたという。
保健当局や専門家は、マダニの拡大は気候データからも説明できる科学的な現象だとして、こうした陰謀論を否定している。その一方で、マダニの生息域拡大はすでに新たな日常になりつつあるとして、日頃から予防を徹底するよう呼びかけている。
ブリティッシュコロンビア州疾病管理センターのネガ・エルミエ氏は、屋外で活動する際は明るい色の長袖を着用し、ズボンの裾を靴下の中に入れて肌の露出を減らすよう勧めている。
また、虫よけ剤を使うことも有効だという。外出後はできるだけ早くシャワーを浴びて体に付いたマダニを確認し、着ていた服は高温の乾燥機にかけることが推奨されている。













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