ダパグリフロジン投与で脂肪肝患者の53%に治療効果、23%が完治

糖尿病治療薬のダパグリフロジン(Dapagliflozin)が、肝臓の脂肪量を減少させ、代謝異常関連脂肪肝炎(MASH)の治療に効果があるという臨床試験結果が発表された。以下は、英医学誌『The BMJ』に掲載された中国の研究チームの論文を基に、健康医療ウェブマガジン「ヘルスデイ」が6日(現地時間)に報じた内容だ。
肝疾患患者154人を対象とした臨床試験で、ダパグリフロジンを投与された約23%の患者の脂肪肝疾患が完治した。一方、プラセボを投与された対照群の完治率は8%だった。
中国にある南方医科大学のチャン・フイジョー教授(内分泌・代謝学)らの研究チームは「ダパグリフロジンを48週間投与した結果、プラセボと比較して、傷跡が悪化することなくMASHが著しく改善した」と発表した。ダパグリフロジンとは、尿から分泌されるブドウ糖の量を増やして血糖値を下げるナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬に分類される2型糖尿病の治療薬だ。
研究チームによると、脂肪肝疾患は全世界の成人の5%以上、糖尿病や肥満と診断される人の30%以上に影響を及ぼすという。脂肪肝疾患により肝臓に傷跡が生じると、肝不全や肝がんにつながる可能性がある。研究チームは、SGLT2阻害薬が脂肪肝患者の肝脂肪含量を改善するという先行研究はあったが、MASH患者を対象とした臨床試験は今回が初めてだと説明した。
また、研究チームは2018年11月から2023年3月にかけて、中国にある6つの病院で脂肪肝疾患の治療を受けていた154名に対し、48週間にわたりダパグリフロジンまたはプラセボを無作為に割り当て、毎日服用させた。ほぼすべての患者(97%)が脂肪肝疾患によって肝臓に傷跡を有しており、約半数(45%)が2型糖尿病を併発していた。
ダパグリフロジン投与群の約53%で、肝臓の傷跡が悪化することなく脂肪肝疾患が改善したことが確認できた。プラセボ群では約30%のみが改善を示した。脂肪肝が完全に消失した割合は、ダパグリフロジン投与群で4分の1(23%)、プラセボ群で8%だった。肝臓の傷跡が改善したケースは、ダパグリフロジン投与群で45%、プラセボ群で20%だった。
また、投与による重大な副作用は確認されなかった。研究チームは「これらの結果は、ダパグリフロジンがMASHおよび肝臓に傷を有する患者にとって有益であるという可能性を示している」と結論づけた。