
目覚めるやいなやコーヒーに手を伸ばす人は多い。しかし、実は起床直後のコーヒーは、エネルギーを奪う「逆効果」になる可能性があるという。
オーストラリアの遠隔医療機関「コンシェルジュ・ドクターズ(Concierge Doctors)」を運営する一般医ザック・ターナー博士は、「コーヒーは起きてすぐに飲むのではなく、起床後60〜90分が理想的なタイミングだ」と指摘する。米メディア『ニューヨーク・ポスト』が現地時間2日にこの見解を紹介した。
ターナー博士によれば、人間の体には「コルチゾール」という「内蔵カフェイン」のようなホルモンがあり、毎朝起床の30〜60分前から分泌され始める。このホルモンは副腎から分泌され、目を覚まし、覚醒状態を高める役割を担っている。
つまり、すでに体内ではコルチゾールによる自然な覚醒が起きているため、そのタイミングでさらにカフェインを摂取すると、刺激が過剰になり、かえって疲労や不安感、焦燥感を引き起こすおそれがあるという。
ターナー博士は「コーヒー自体が悪いわけではないが、タイミングが肝心だ。正しいタイミングで飲めば、集中力を高めたり、気分転換やパフォーマンスの向上に役立つ」と述べている。
一方で、モーニングコーヒーには健康効果もあるという研究結果も報告されている。
米テュレーン大学のルー・チー教授らの研究チームは、今年1月に欧州心臓病学会(ESC)の学術誌『ヨーロピアン・ハート・ジャーナル』で発表した論文の中で、「コーヒーを飲む時間帯と健康リスクとの関連性」を世界で初めて本格的に検証した。
研究は1999年から2018年までに実施されたアメリカ国民健康・栄養調査(NHANES)のデータを用い、成人4万725人を対象に、コーヒーの摂取時間や量と、死亡率および死因の関連を約10年間追跡調査した。
その結果、主に午前中にコーヒーを飲む「モーニングコーヒー群」は、全く飲まない人に比べて心血管疾患による死亡リスクが31%も低く、全死因の死亡リスクも16%低いという結果が得られた。
一方、コーヒーを終日飲むグループは、飲まないグループと比べても有意な差は確認されなかった。つまり、「コーヒーを飲むこと自体」よりも「いつ飲むか」が健康に影響を及ぼす可能性が高いということだ。
さらに興味深いのは、モーニングコーヒー群では摂取量にかかわらず死亡リスクが下がっていた点だ。特に2〜3杯、あるいは3杯以上飲む人の方が、1杯未満の人よりもリスク低下の幅が大きかった。
とはいえ、研究チームは「モーニングコーヒーがなぜ心血管系の死亡リスクを下げるのか、その直接的な因果関係はまだ明らかではない」としつつ、「午後や夕方に飲むコーヒーが体内のホルモンバランスや睡眠ホルモン・メラトニンの分泌に悪影響を与え、それが血圧や炎症に関わってくる可能性がある」と説明している。
ルー・チー教授は「今回の研究結果は、遅い時間帯のコーヒーよりも朝の一杯が心血管の健康に良く、全体の死亡リスクも下げることを示唆している。ただし、より確実なエビデンスを得るには、異なる集団を対象にさらなる臨床試験を行う必要がある」と締めくくった。
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