
仮想資産市場が中東地域での全面戦争懸念に揺れた。先週初め、米中関税交渉の進展や米国の物価指標改善でビットコインなど仮想資産価格が上昇したが、13日(現地時間)のイスラエルによるイラン首都テヘラン空襲報道を受け急落し、その後横ばいとなった。
16日、仮想資産情報プラットフォーム「CoinMarketCap」によると、午前9時30分時点でビットコイン価格は10万5,511ドル(約1,527万7,504円)で、1週間前比0.49%下落した。イーサリアムは2,543ドル(約36万8,215円)で1.45%上昇、BNBは648ドル(約9万3,788円)、ソラナは153ドル(約2万2,144円)と、それぞれ0.64%、0.61%下落した。リップルは2.16ドル(約313円)となり、4.22%の急落を記録した。主要アルトコインの中で最大の下落幅となった。
11日にはドナルド・トランプ米大統領が「中国との交渉は前向きに進展している」と発言し、これを受けて市場では米中関税交渉再開への期待が高まり、ビットコインは再び11万ドル(約1,591万7,494円)を突破した。
また、米労働省が発表した5月の消費者物価指数(CPI)および生産者物価指数(PPI)は、いずれも市場予想を下回り、上昇を後押しした。インフレ懸念が和らぎ、7月の米国の利下げ期待が高まり、リスク資産全般に追い風となった。
しかし、13日にイスラエルによるイラン首都テヘラン空襲報道が伝わると、市場の様相は一変した。ビットコインは10万3,000ドル(約1,490万4,563円)台まで急落した。アルトコインも軒並み下落した。
地政学的リスクの拡大により、「デジタルゴールド」として注目されていたビットコインの安全資産としての役割に対する疑念が強まっている。リスク発生時に安全資産として機能すると期待されていたビットコインが、リスク資産と連動して下落したためだ。一方、伝統的な安全資産とされる金は、1日で1.37%上昇し、安全資産選好の動きを反映した。
リスク資産への投資意欲減退は米国株式市場にも如実に表れた。13日(現地時間)のニューヨーク株式市場では主要指数が軒並み1~2%下落して取引を終えた。ダウ平均株価は1.79%、S&P500指数は1.13%、ナスダック総合指数は1.30%それぞれ下落して引けた。
現在、下落分を一部取り戻し、10万5,000ドル付近で横ばいとなっているビットコインが、迅速にショックを吸収し、「デジタルゴールド」としての地位を回復できるか注目されている。