
ロシア製ドローンによる攻撃で、ウクライナの首都キーウが一夜にして瓦礫の山と化した。戦争の主役が高額なミサイルから無人機へと移行しつつある今、台湾有事を念頭に米軍と中国軍の対ドローン戦略が過熱している。
香港の『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』や中国軍機関紙『解放軍報』によれば、中国人民解放軍は外部の軍事的脅威に迅速かつ効果的に対応するため、AIを軸にした専用の「対ドローン戦闘部隊」を創設する可能性が極めて高いという。
背景には、ウクライナ戦争やインド・パキスタン間の衝突、イスラエルとイランによる報復空爆の連鎖など、近年の紛争において無人機の存在感が急激に高まっているという現実がある。
一方、米国は台湾防衛の最前線として、無数のドローンや無人艦艇を用いた「地獄絵図戦略」を描いているとされる。もし中国軍が台湾海峡を越えて奇襲を仕掛けた場合、米軍と台湾軍が協力し、空・海からドローンを大量投入して凄惨な迎撃態勢を敷くという構想だ。
中国としてもこのシナリオを無視できない。習近平国家主席が3期目の任期を終える2027年までに台湾を武力統一する可能性が国際社会で指摘されており、軍事的準備は現実味を帯びてきている。
『解放軍報』は、「米国による地獄絵図戦略の存在を北京が認識している」としたうえで、「現在の再編は既存の部隊にドローン迎撃能力を統合する形で進行中であり、専門部隊の設立は長期的な目標だ」と軍関係者の声を紹介した。
また、中国の軍事専門家らは、電子戦部隊の強化に加え、AIによるリアルタイム解析とモバイル妨害が可能な「知能型無人迎撃ユニット」の新設を提案している。
さらに注目されるのが、ドローン戦の主戦場が「火力」から「認知戦」へと移行しているという指摘だ。AIドローン群は相手の攻撃を瞬時に分析し、それにどう対応するかの「意思決定スピード」が勝敗を分けるという。
専門家は、「ディープラーニングを活用し、膨大な軍事データをAIで統合・処理したうえで、指揮系統が即時に判断を下す仕組みが不可欠」と強調する。
すでに2016年初頭には人民解放軍空軍において、無人機の探知と無力化を担う特殊部隊が編成されているものの、陸・海・空・ロケット軍においては、いまだ本格的なドローン迎撃部隊の整備は進んでいない。
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