今年半ばから犯行を計画か
計画書の内容と実際の現場が一致
現場を事前に下見、変装は5回

台湾・台北の中心部で、煙幕弾のような発煙物や刃物を使った無差別襲撃を起こし、逃走の末に転落して死亡した20代の男の端末から、「殺害計画書」とみられる文書が見つかった。警察は、少なくとも6か月ほど前から犯行を準備していた可能性があるとみて捜査している。

台湾メディア「TVBS」によると、台北市警の特別捜査チームは20日、前日に台北駅と中山駅周辺で起きた襲撃事件について、死亡した張文容疑者(27)のパソコンやタブレット端末、クラウド上のデータを分析した結果、いわゆる殺害計画書を発見した。警察は予備的な分析として、押収文書の記載内容と実際の犯行場所・状況が一致したと説明し、計画的な犯行と判断したという。現時点では共犯の可能性は低いとも付け加えた。

現地警察によれば、容疑者は今年半ばごろから襲撃を計画し、犯行3日前から現場近くのホテルに滞在して下見を重ねていた。犯行当日の19日は各所で放火したうえで、台北駅と中山駅周辺で刃物を振り回し、その間に5回着替えて追跡を逃れようとしたとされる。
容疑者は午後3時40分から4時ごろにかけて、オートバイで林森北路や長安東路付近など2か所を回って放火し、オートバイ2台と車3台が焼けた。その後、オートバイを置いて公共レンタサイクル「YouBike」に乗り換え、ベージュ色の上着を脱いで現場を離れたという。

さらに午後4時37分ごろ、黒い服装で中正区の居住地へ戻って再び放火し、黒い半袖と半ズボンの上に灰色のレインコートを羽織って台北中心部へ移動した。午後5時23分ごろ、台北駅M7出口に到着するとレインコートを脱ぎ、防毒マスクのようなものを着けたうえで地下通路に煙幕弾や火炎瓶を投げ込み、最初の襲撃に及んだ。この際、50代の男性が心肺停止の状態で搬送されたが、その後死亡が確認された。

最初の犯行後、容疑者は地下通路を渡って中山駅近くのホテル客室へ移動し、再びベージュ色の上着を手に取った。容疑者は17日からこのホテルに宿泊していたと伝えられている。さらに煙幕弾のほか、ベストや膝当てなども持ち出して中山駅方面へ向かい、最後の襲撃を行った。
中山駅近くの道路では煙幕弾を相次いで投げ、信号待ちのオートバイ運転手や通行人に刃物を振り回したという。続いて、近くの誠品生活(エスライト)の商業施設にも入り、1階や4階などで買い物客を無差別に襲ったとされる。
午後6時ごろ、警察に包囲された容疑者は刃物や防弾ベストを放棄し、施設の5階から飛び降りた。病院に搬送されたものの死亡が確認された。事件では、容疑者を除いて3人が死亡し、11人が負傷した。負傷者のうち2人は重傷だという。
現場ではサバイバルゲーム用品のほか、煙幕弾17個、ガソリン瓶15本、刃物などが見つかった。警察は、容疑者の出身地とされる桃園の実家や住居、宿泊していたホテルからも、パソコンやタブレット端末、刃物、油の容器、煙幕弾などを押収したとしている。
一方、動機は特定されていない。容疑者は昨年、予備役の訓練に参加しなかったことなどを理由に、今年7月11日付で兵役法違反(兵役妨害)容疑で指名手配されていたという。住民登録上の住所と実際の居住地が異なり、召集通知が届かなかったとの報道もある。

また、過去に空軍へ志願入隊したものの、2022年に飲酒運転で除隊したと伝えられている。警備関連の仕事をした経験がある一方、現在は無職とみられる。
両親は警察の事情聴取に対し、ここ2年間は会っておらず連絡も取っていなかったと説明し、犯行に至った理由は全く見当がつかないと話したという。携帯電話の記録でも、今年9月以降は通話履歴がないことが確認されたとされる。
高校の同級生は、内向的で物静かな人物だったと証言しており、現地では単独犯による事件の可能性に注目が集まっている。
現地メディアの一部は、周囲との接触が乏しかったとの証言などを踏まえ、「ローンウルフ型」の事件だった可能性にも言及している。
一方で、幼い頃から武器に関心があったという家族の説明などを踏まえ、ゲーム依存との関連を指摘する見方も出ている。















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