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「国民の声は聞こえない?」──国民の反対を背に、トランプは“禁断の一線”を越えるのか

荒巻俊 アクセス  

引用:depositphotos
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米国のドナルド・トランプ大統領が、イランに対する地上軍投入という難しい判断に少しずつ近づいている様相だ。イランの激しい抵抗により、政権転覆を目指すには地上軍投入が避けられない状況だが、地上軍を投入すれば米兵の犠牲拡大や戦争の長期化といったリスクは大きいとされる。トランプ大統領はイランへの追加の大規模攻撃を警告する一方、地上軍投入については曖昧なメッセージを発している。

トランプ大統領は2日(現地時間)「他の大統領たちは地上軍を投入しないと言ってきたが、私は地上軍投入を恐れてはいない」と述べ「私は『おそらく必要ないだろう』あるいは『もし必要なら(送ることもできる)』と言っている」と語った。トランプ大統領がいわゆる「戦略的曖昧さ」を選択したとの見方が出ている。イランでの軍事作戦目標を達成するためには地上軍投入も排除しないという意味に解釈されるが、やや留保を含んだ表現でもある。

こうした曖昧さは、トランプ大統領が追加攻撃については明確に警告した姿勢と対照的だ。トランプ大統領は同日、イラン空爆後初の公開行事となった名誉勲章授与式でイランとの戦争について「4~5週間で終わると予想していたが、それより長く続ける能力がある」と述べ「どれほど時間がかかろうと構わない。何であれ我々はやり遂げる」と強調した。また「我々はイランのミサイル能力を破壊している。毎時間そうしている」とし「イラン海軍を壊滅させつつある」と述べた。

さらにCNNとのインタビューでトランプ大統領は「我々はまだ彼らを本格的に強く攻撃し始めたわけではない。大きな波はまだ起きていない」と語り「より大きなものが間もなくやって来る」と付け加えた。攻勢は続けるが、地上軍投入については依然として明確な立場を示していない。

米国防長官のピート・ヘグセス氏も同日午前の記者会見で、地上軍がイランに配備されているのかとの質問に「いいえ。しかし我々は今後何をするのか、何をしないのかについて議論はしない」と答えた。そのうえで「20万人を投入し、20年間駐留する必要はない」とも述べた。米国はこれまで、航空母艦やB2ステルス爆撃機など空軍戦力を中心にイランを空爆している。

トランプ政権が慎重な姿勢を示しているのは、地上軍を投入した瞬間、限定的な空爆が長期の全面戦争へと発展しかねないためだ。トランプ大統領は、米国とイスラエルによるわずか1日の空爆でイラン最高指導者アヤトラ・アリー・ハメネイ師を排除したと誇示しているが、この作戦でも米兵6人が死亡した。イランに地上軍を投入すれば、米軍の被害は急速に拡大する可能性がある。過去のイラク戦争やアフガニスタン戦争で多くの米兵が犠牲となった「悪夢」が再現される恐れもある。

米国内世論も好意的とは言えない。CNNが世論調査会社SSRSに委託し、先月28日から前日まで米国の成人1,004人を対象に実施した調査によると、回答者の59%がイラン攻撃の決定を支持しないと答えたという。イランへの派兵については反対が60%に上り、賛成の12%を大きく上回った。ヘグセス長官が「イラク戦争のような終わりなき戦争はしない」と述べたのも、こうした世論を意識したものとみられる。

トランプ大統領自身もこれまで、海外への米軍の軍事介入に批判的な立場を取ってきた。支持層である「MAGA(米国を再び偉大に)」は米軍が海外の紛争に介入して犠牲を出すことに強く反発してきた。

問題は地上軍を投入せずにイランの神政体制を転覆させる有効な手段が見当たらない点だ。ベネズエラがニコラス・マドゥロ大統領の拘束後に米国に協力的な姿勢を示しているのとは対照的に、イランは強力な報復に出ている。イランはイスラエルや米軍が駐留する中東諸国に対し、ミサイルや無人機で攻撃を実施した。イランの「代理勢力」である武装組織ヒズボラもイスラエルへの攻撃に踏み切り、戦線はさらに拡大している。

イラン革命防衛隊(IRGC)は同日、ホルムズ海峡の通航を試みる船舶は燃やすと警告し「一滴の石油も通さない」と宣言した。ヘグセス長官は「政権交代のための戦争ではない。しかし明らかに政権は変わった」と述べたが、イランのイスラム体制は依然として存続している。

トランプ政権がイラン政権交代ではなく、核開発の阻止やミサイル能力の破壊などへ目標を引き下げる可能性もある。トランプ大統領はイラン攻撃直後とは異なり、この日は政権転覆には言及しなかった。ニューヨーク・タイムズは「トランプ大統領がイラン国民に政府に対して蜂起するよう促した発言を繰り返さなかった点は注目に値する」とし「これは政権が今回の戦争で達成しようとしている目標について明確なメッセージを打ち出すのに苦慮していることを示すもう一つの兆候だ」と分析した。ウォール・ストリート・ジャーナルも「トランプ大統領のイランに対する最終的な目標は依然として不明確だ」と報じ「作戦開始以降、政権交代から米国の安全保障上の脅威の除去、新たなテヘラン指導部との交渉締結に至るまで、相反する主張を展開してきた」と伝えた。

荒巻俊
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