
イラン周辺海域に位置するホルムズ海峡が事実上封鎖されたことで、世界全体の石油および液化天然ガス(LNG)輸送量の約20%が市場から失われた。米国は世界最大の石油・天然ガス生産国であるものの、すでに輸出能力は限界に達しており、中東の供給減を完全に補うのは困難な状況とみられる。ただ、3日(現地時間)にドナルド・トランプ米大統領が表明した「タンカー保険支援および護衛」措置が、急騰していたエネルギー価格の抑制要因として作用している。
これまで原油価格急騰の主因は、攻撃の脅威だけでなく、保険料が異常な水準にまで高騰、あるいは加入自体が困難となった海上保険問題にあった。こうした中、地中海で発生したロシア籍LNG運搬船の爆発事故が市場の警戒感を一段と強め、不安心理をさらに拡大させた。
欧州のガス価格指標はわずか2日間で90%急騰し、中東やカタール産LNGへの依存度が高いアジア市場も直撃を受けた。一方、米国は潤沢な国内生産を背景に影響は比較的限定的で、未契約分の一部を高値の現物市場で販売できる状況にあり、結果的に利益を押し上げている。
トランプ大統領はソーシャルメディアで、具体的な詳細には触れないまま、「湾岸を通過するすべての海上貿易、とりわけエネルギー関連資産に対し、政治リスク保険と金融保証を提供する」と表明した。さらに、必要であれば米海軍がホルムズ海峡を航行するタンカーを直ちに護衛すると付け加え、「いかなる事態があっても、世界に向かうエネルギーの自由な流れを確保する」と強調した。
米投資会社レイモンド・ジェームズのアナリスト、パベル・モルチャノフ氏は、「米国は欧州やアジアのような供給不安を抱えておらず、むしろ恩恵を受ける可能性がある」と分析する。実際、ベンチャー・グローバルのような米国のLNG輸出企業は自社タンカー船団を保有しているため、保険料上昇の影響を受けにくく、現物市場で高い収益を確保しているという。エクソンモービルも、カタールと合弁で進めるテキサス州の「ゴールデンパス」LNG施設の早期稼働を急ぎ、供給拡大に乗り出している。
それでも、イランを巡る紛争の余波で、米国の原油価格ベンチマークは年初比で約30%上昇した。エクソンモービルやフランスのトタルエナジーズなどの世界的エネルギー企業は、中東駐在員の安全確保のため家族の退避を命じるなど、非常体制を敷いている。
ライスタッド・エナジーのマチュー・ウーティング氏は、「中国は中東産原油およびカタール産ガスの最大の輸入国であり、最終的には中国がイランに圧力をかけ、海峡を再開させるのは時間の問題だ」との見方を示した。現在、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)は増産を約束し、パイプラインの迂回輸送などの自助策を講じているが、ホルムズ海峡を通過できない状況では、その効果は限定的にとどまる見通しだ。
地政学の専門家らは、現時点でのイランの攻撃は一定の計算のもとに抑制された範囲にとどまっていると評価する一方、仮にイランやその代理勢力であるヒズボラやフーシ派がエネルギー生産施設そのものを標的に全面的な破壊工作に踏み切れば、原油価格は1バレル=100ドル(約1.5万円)を大きく上回る水準に達する可能性があると警告している。
















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