
イスラエルが、イラン最大のガス田であるサウスパースと、これに連なる南部ブーシェフル州アサルーイェの天然ガス精製施設を空爆した。2月28日に米国とイスラエルがイランへの攻撃を開始して以降、イランのエネルギー生産施設が直接の標的となったのは初めてのケースとなる。
これに対し、イランはサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタールなど中東各国の石油・ガス施設に対する報復に動いた。サウスパース・ガス田を共有するカタールも、今回の攻撃は世界のエネルギー安全保障と地域住民に対する深刻な脅威だとして、イスラエルを強く非難した。
イスラエル側は、サウスパースとアサルーイェ精製施設への攻撃について、イランの戦費を支える収入源を断つための措置だと説明した。米国は、イスラエルからサウスパース攻撃計画を事前に伝えられていたものの、作戦には直接参加していないとしている。一方で、米国の事前承認や緊密な調整の下で進められたとの報道も出ている。
イラン国営放送は、サウスパース・ガス田の第3、第4、第5、第6鉱区が米国とイスラエルによるミサイル攻撃を受け、発生した火災で生産が停止したと報じた。
半官営タスニム通信は石油省の話として、アサルーイェのパース特別経済エネルギー地帯(PSEEZ)が今回の攻撃で被害を受け、火災も起きたが、主な火勢は抑えられたと伝えた。
アサルーイェ当局は半官営ファルス通信に対し、延焼を防ぐため一部施設の稼働を止めたものの、状況は管理下にあり、現時点で人的被害は確認されていないと明らかにした。
イラン当局は直ちに報復を予告した。国営IRNA通信によると、イランのモハンマド・バゲル・ガリバフ国会議長はこの日、SNSで、米国とイスラエルによる自殺行為だと非難したうえで、今や目には目の報復原則が正式に発動した、これまでとは次元の異なる新たな対決段階が始まると警告した。
イラン革命防衛隊(IRGC)も、タスニム通信が伝えた声明で、サウジアラビアのサムレフ製油所とジュベイル石油化学コンプレックス、UAEのアル・ホスン・ガス田、カタールのラスラファン製油所、メサイード石油化学コンプレックス、メサイード・ホールディングの5施設を名指しし、数時間以内に標的になると通告した。
そしてイランは、実際に報復に踏み切った。
カタール国営エネルギー大手のカタールエナジーは、世界最大の液化天然ガス(LNG)輸出拠点であるラスラファンがイランのミサイル攻撃を受け、広範囲で被害が出たと発表した。サウジアラビアも、リヤドに向けて発射された弾道ミサイル4発を迎撃し、東部のガス施設を狙ったドローン攻撃の試みも阻止したとしている。
AP通信によると、サウスパースはイランとカタールが共有する世界最大の天然ガス埋蔵地のイラン側鉱区で、イランの天然ガス消費の約80%を支えている。
カタール外務省のマジド・アル・アンサリ報道官はSNSで、サウスパースはカタールのノースフィールドとつながる共同資産だとしたうえで、今回の攻撃を無責任で危険な措置だと断じた。
さらに、エネルギー施設を標的にする行為は、世界のエネルギー安全保障だけでなく、地域住民と環境に対する脅威にもなると強調し、重要インフラへの攻撃停止を改めて要求した。そのうえで、すべての当事者は自制を働かせ、国際法を順守し、地域の安全と安定を損なわない形で緊張緩和に努めるべきだと訴えた。
イスラエルメディアのエルサレム・ポストなどは、イスラエルが米国の承認の下でサウスパース攻撃を実施したと報じた。米ニュースサイトのアクシオスも、イスラエル高官の話として、今回の作戦は米国の事前承認と緊密な調整の下で進められたと伝えている。
ただ、米国とイスラエルはいずれも現時点で直接の責任は認めていない。事情に詳しい米当局者はAP通信に対し、米国はイスラエルのサウスパース攻撃計画について事前に説明を受けたものの、作戦には参加していないと述べた。
イスラエルはイランへの攻撃をさらに強めている。これに先立ち、イランのアリ・ラリジャニ最高国家安全保障会議(SNSC)書記が空爆で殺害され、革命防衛隊傘下バシジ民兵組織のゴラムレザ・ソレイマニ総司令官や、エスマイル・ハティブ情報相も殺害対象になったと伝えられている。
イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は、イランでは誰一人として免責されない、全員が標的だと威嚇した。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相も、イスラエル軍に対し、追加承認なしでも作戦機会があればイラン高官を攻撃できる権限を与えた。
米国とイスラエルによる対イラン攻撃の余波は、世界の原油・ガス輸送の約20%が通るホルムズ海峡の混乱に続き、生産施設への攻撃にまで広がった。これを受け、国際原油価格は急騰している。
AP通信によると、原油消費国は、イランがホルムズ海峡を封鎖しても生産施設さえ無事なら混乱は短期間で収まるとみていた。ところが、イランが中東各国のエネルギー施設へ報復攻撃に出るとの懸念が強まり、サウスパースが本来はイラン内需向けの拠点であるにもかかわらず、原油とガスの国際価格は大きく跳ね上がった。
ジョージ・メイソン大学のウムド・ショクリ研究員は、イラン反体制系メディアのイラン・インターナショナルに対し、サウスパースは単なるガス田ではなく、イラン経済を支える柱であり、世界のエネルギー市場と直結していると指摘した。そのうえで、今回の衝突は局地的な打撃が世界的な結果を招く段階に入ったとの見方を示した。
さらに、イランがイスラエルと全く同じ形で打撃を与えるのは難しいとしても、中東の産油国や海上輸送路、海洋施設を狙えば、地域全体にコストを転嫁できると分析した。
















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