終戦MOU公式署名
イラン、「核放棄」を口頭で約束し
石油輸出と資産解除を獲得
ホルムズ海峡は60日間無料開放
「イランの長年の懸案を一括で満たす内容となった」

「戦争開始時、トランプ大統領は『イランの無条件降伏』以外に取引はないと言った。しかし逆にイランは祝砲を上げて戦争を終結させることになった」
ニューヨーク・タイムズ(NYT)は17日(現地時間)、米国とイランが締結した終戦覚書(MOU)の全文が公開されるとこう評した。ドナルド・トランプ米大統領は今回の合意を通じて戦争107日目にホルムズ海峡の再開放とイランの非核化への道を開いたと主張したが、ワシントン政界では批判が広がっている。米国は制裁緩和や資産凍結解除、原油輸出許可といった重要な交渉カードを先行して提示した一方、イラン側は核兵器開発の放棄を口頭で約束するにとどまったというのだ。「イランの長年の懸案を一括で満たす内容となった」「米国は手形一枚に現金をすべて渡した」という声も出ている。
トランプ大統領はこの日、主要7カ国首脳会議(G7サミット)に出席するため訪問中のフランスのヴェルサイユでイラン側とMOUに公式署名したとホワイトハウスが発表した。イラン外務省も「両国大統領が公式署名した」と述べた。当初、MOUは19日の対面署名式後に公式発効する予定だったが、この日両国大統領の署名により発効が前倒しされた。
イランが核を放棄する見返りに経済的利益を提供することを骨子とした今回の合意について、トランプ大統領は「我々が達成しようとしたすべての目標、そしてそれ以上だ」と自画自賛した。トランプ大統領はオバマ政権が2015年に締結したイラン核合意(JCPOA)を「核兵器への道」と批判した後、今回の「トランプ合意」は「核兵器への道を阻む壁」だと述べた。

しかし、公開された文案がトランプ大統領の説明とは異なり、イランに極めて有利な構造だと分析されている。最大の論点はホルムズ海峡条項だ。MOU第5条はイランが商船の安全な通航を保証するが「60日間のみ無料で」という条件を明記した。これはこれまで「ホルムズ海峡が完全に開放され、通行料もない」と主張してきたトランプ大統領の発言と矛盾する。実際、イラン交渉団長のモハンマドバゲル・ガリバフ国会議長はこの日、国営テレビのインタビューで「ホルムズ海峡は戦争前の状態には戻らない」とし「我々が提供するサービスに対する料金を徴収する」と述べた。事実上60日後に通行料を課す意向を公開宣言したことになる。
「オバマ合意」より後退…イラン「60日後ホルムズ海峡に通行料を課す」
エネルギー分野でも米国が大規模な先制譲歩をしたとの評価が出ている。MOU第10条は署名と同時にイラン産原油と石油化学製品、派生商品輸出に対する制裁免除を規定した。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は制裁が緩和される場合、イランの年間原油販売収入が600億ドル(約9兆7,000億円)を超える可能性があると分析した。さらにMOU第6条には最低3,000億ドル(約48兆5,100億円)規模のイラン再建・経済開発計画の策定条項まで含まれ、トランプ大統領が過去オバマ政権の17億ドル(約2,748億6,500万円)のイラン資産返還を「ばら撒き」と批判していたことと比較して、はるかに大きな経済的利益を約束したのではないかとの批判も出ている。
核プログラム関連のMOU第8条はイランが「核兵器を取得または開発しない」と再確認したが、これは2015年オバマ政権の核合意にも含まれていた文言だ。むしろ当時はイランが保有していた濃縮ウランの97%をロシアに搬出したが、今回の合意では濃縮物質をイラン国内で低濃度に希釈する方法のみが明記された。トランプ大統領はイランの濃縮ウランを「核の塵(Nuclear Dust)」と表現し、「米国に持ち込む」と言ってきた。しかし、イランのエスマイル・バガイ外務省報道官はこの日「イランの核物質は国外に搬出されない」と明言した。

制裁解除条項も批判の対象となっている。MOU第7条は国際連合安全保障理事会の制裁と国際原子力機関(IAEA)の決議、米国の1・2次制裁を含む「すべての種類の制裁」終了を目指すと明記した。しかし文案のどこにもイランのテロ支援、弾道ミサイル開発、ドローンプログラム、米国人暗殺陰謀、中東内代理勢力支援など、これまで米国が制裁と軍事圧力の根拠としてきた事案は言及されていない。凍結資産解除条項も資金が「最終受益者」にも支払われる可能性があると規定し、テロ組織や制裁対象機関、イスラム革命防衛隊(IRGC)関連団体などに流れ込む可能性を排除できなかったとの指摘がある。
またMOU第2条は米国とイランが互いの内政に干渉しないと規定した。ワシントンの一部では、この条項が今後イラン国内の人権弾圧、反政府デモ鎮圧、デモ隊殺害問題などに関して米国が追加で圧力をかける余地を自ら狭めたのではないかとの見方も出ている。トランプ大統領は戦争初期にイラン国民に政権に立ち向かうよう公然と呼びかけたが、今回の合意文には事実上それと正反対の趣旨の文言が含まれていることになる。
CNNはトランプ大統領が自身の著書『取引の技術』で「交渉で最悪なのは合意を切望しているように見えることだ」と書いたにもかかわらず、トランプ自身がイランとの合意に執着する姿を見せたと指摘し、「今回のMOUの本質はイランが即座に数百億ドルを得る代わりにホルムズ海峡で船に発砲しないことだけだ」とした。
議会でも懸念が続いている。民主党のティム・ケイン上院議員は「オバマ核合意で得たものよりもはるかに多くイランに譲歩し、はるかに少なく受け取る合意だ」と述べ、共和党のビル・キャシディ上院議員は「イランの核野望は抑制されず、ホルムズ海峡を脅かす効果を学び、今回の合意の下で全く新しいインフラを構築することになる」と述べた。共和党のジョン・スーン上院院内総務も「議員たちが合意について質問する事項が一つや二つではない」と語った。
これらの論争を意識したのか、トランプ大統領はこの日取材陣に「イランが協定を遵守しないなら、彼らが遵守するまで再び爆撃する」と述べた。しかし、米国内の原油価格急騰と経済不況の懸念から急いでMOUを締結したトランプ大統領が再びイランとの全面戦争に乗り出すのは容易ではないとの見方も多い。

















コメント0