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「バカめ、問題は核じゃない!」…MOUの抜け穴を突いたイラン代理勢力、勢いづくイスラエル

有馬侑之介 アクセス  

出典:AFP通信
出典:AFP通信

米国とイランが戦争終結に向けた了解覚書(MOU)に署名し、最終合意に向けた交渉を進める中、MOUの曖昧さやイランの代理勢力を巡る問題が、交渉の足かせになっているとの指摘が出ている。

米国とイランのMOU第1条には「レバノンを含む全ての戦線で軍事作戦を即時かつ恒久的に終了する」と明記されている。しかし、署名当事者ではないイスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラに、合意をどのように履行させるかについては具体性を欠いている。

さらに、当事国であるレバノンは、今回の米国とイランの交渉に直接参加していない。

最大の問題は、イランの代理勢力による停戦の履行を担保する具体的な方法が、MOUで明確に示されていないことだ。

イランの代理勢力とは、レバノンのヒズボラやイラクのシーア派民兵組織、イエメンのフーシ派、パレスチナのイスラム組織ハマスなど、イランから支援を受け、中東で活動する武装勢力を指す。

引用:イスラエル軍
引用:イスラエル軍

特にヒズボラは、1982年のイスラエルによるレバノン侵攻を契機に結成された中核的な代理勢力だ。イランにとって、ヒズボラを含む代理勢力は、容易に手放すことのできない存在だ。代理勢力を通じて直接軍事介入を避けながら、中東地域で影響力を行使し、敵対勢力を抑止してきたためだ。

代理勢力による停戦の履行方法が明確でない今回のMOUは、結果としてイスラエルとヒズボラの衝突を巡る解釈の余地を残した。双方の対立が続けば、戦争終結に向けた交渉が難航する可能性がある。

イランはスイスでの交渉開始に先立ち、「今回の会談では、ヒズボラとイスラエルの紛争を最優先議題とする」と表明していた。これにより、スイスでの会談では、米国が重視するイランの核開発問題やホルムズ海峡の航行に加え、イランの代理勢力を巡る問題が主要議題の一つとなった。

トランプ大統領「イランがヒズボラを抑えなければ再び攻撃する」

MOUを巡る課題が浮き彫りになる中、米国のドナルド・トランプ大統領は、交渉直前までイランをけん制する発言を続けた。

トランプ大統領は21日(現地時間)、米国とイランの交渉団がスイスに到着した頃、自身のSNS「トゥルースソーシャル」に「イランはレバノンで代理勢力のヒズボラによる挑発を直ちにやめさせなければならない。そうしなければ、先週をはるかに上回る規模でイランを再び攻撃する」と投稿し、警告した。

引用:カタイブ・ヒズボラ
引用:カタイブ・ヒズボラ

これに対し、イラン側の首席交渉代表を務めるイランのモハンマド・バーゲル・ガーリーバーフ国会議長は「発言に注意すべきなのは彼らの方だ。我が軍は別の方法で対応する準備ができている。彼らは口にするだけだが、実際に行動するのは我々だ」と反論した。

イラン国営メディアは、トランプ米大統領の発言を受けて交渉が難航し、一時中断したと伝えた。イラン代表団はその後、カタールの仲介団と個別に協議した後、交渉会場を離れた。

一方、交渉に詳しい関係者はAP通信に対し、「イラン代表団は依然として交渉に参加しており、仲介国にも交渉から離脱する意向を伝えていない」と説明した。

イスラエル、レバノンからの撤兵を拒否

今回の交渉は、60日間の協議を通じて暫定合意を最終合意へと発展させるための第一歩となる。米国はイランに対し、核開発計画を巡る交渉を開始するとともに、ホルムズ海峡の航行を引き続き確保するよう求めている。

一方、イランはレバノン問題を優先的に解決すべきだとの立場を示している。特に、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が、レバノン南部からイスラエルへの脅威が完全に取り除かれるまで撤兵しないとの立場を示したことで、交渉の焦点はさらにイスラエルとヒズボラの紛争へと移った。

イスラエル政府と軍当局の内部では、ヒズボラとの戦争について、米国とイランの戦争終結に向けた交渉ではなく、イスラエルとレバノン政府の直接交渉で決着させるべきだとの主張が出ているという。

イスラエルには、米国がイランの要求を受け入れて即時停戦や撤兵を求める前に、レバノン政府と直接交渉し、自国に有利な条件を確保する狙いがあるとみられる。イスラエルとレバノンは23~25日、ワシントンで米国の仲介による交渉に臨む予定だ。

イスラエルの説得に苦慮するトランプ米大統領

イスラエルがレバノンからの撤兵を拒む中、トランプ米大統領は「アメとムチ」を使い分けながら、イスラエルの説得に苦慮している。

出典:AFP通信
出典:AFP通信

米インターネットメディアのアクシオスによると、トランプ米大統領は19日、イスラエル側との電話会談で、停戦に同意するよう求めた。その際、「時には落ち着いて頭を使う必要がある」と述べ、イスラエル側に譲歩を促した。

しかし、翌20日には、「トランプ氏が握るネタニヤフ氏再選の不安定なカード」と題した米メディアの記事を共有し、ネタニヤフ首相をけん制した。記事には、トランプ米大統領が最近、イスラエルメディアに対し、「今回のイスラエル総選挙に誰が立候補するのかを見極めなければならない。ネタニヤフ首相とは良好な関係を維持しているが、もう少し理性的になる必要がある」と述べたことが記されていた。

この発言は、トランプ米大統領がイスラエル総選挙に影響を及ぼす可能性を示唆したものと受け止められている。

米・イラン、実務者協議を継続

米国とイランがスイスで行った戦争終結に向けた交渉は、トランプ米大統領の発言を巡ってイラン側が反発するなど、難しい局面も見られた。そうした中、仲介国は交渉の流れを立て直すため、水面下で調整を続けている。

イランは米国との対面協議を終えた後、カタールとの二国間協議を通じて自国の立場を伝えた。カタール代表団はその後、交渉会場に戻り、追加の調整を進めたという。

両国は今後、ホルムズ海峡の航行の確保や核問題、制裁解除を巡る実務者協議を続ける見通しだ。米国は今回の交渉を通じ、国際原子力機関(IAEA)によるイランの核施設への査察を実現し、その見返りとして凍結資産の一部を解除する案を検討しているとされる。

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