
奈良公園の鹿が市街地に急増、農作物被害や交通障害も
国の天然記念物に指定され、「神の使い(神鹿)」として古くから保護されてきた奈良公園の鹿が、公園の外へと行動範囲を広げ、市街地での出没が相次いでいる。複数頭の群れが車道を横断して交通を妨げるほか、住宅街の畑を荒らすなど、地域住民の生活への影響が深刻化している。専門家は、公園内の個体数が過去最多に達したことが市街地進出の主因だと指摘する。
過去最多の1,465頭、公園外への「あふれ出し」
一般財団法人「奈良の鹿愛護会」が2025年7月に実施した生息頭数調査では、奈良公園域内で前年より140頭多い過去最多の1,465頭が確認された。1953年の調査開始以来、最多の記録である。内訳はオス315頭、メス816頭、子鹿334頭で、特に子鹿が前年比100頭以上増加した。愛護会によると、公園外に出た鹿はすでに200頭以上に上るとみられる。公園内での過密化が進む中、押し出されるように外へ出た鹿が市街地で繁殖を重ね、「公園を知らない世代」の個体が定着しつつある実態も明らかになっている。
増加の背景には観光客の行動も影響しているとされる。鹿せんべい以外の食べ物を与えることは禁止されているにもかかわらず、外国人観光客を中心に食べ物や食べ残しを与えるケースが後を絶たない。これにより鹿の栄養状態が改善されて出産数が増加し、頭数の急増につながったと専門家は分析する。
車道に群れ、畑に毎日、住民の被害は日常に
市街地では、車道を堂々と横断する鹿の群れが相次いで目撃されており、乗用車やバスが立ち往生する事態も起きている。住宅街の畑を持つ男性は、毎日のように鹿が訪れて農作物を荒らすため、畑の周囲にネットを設置して対策を講じているという。奈良市議会でも「市民生活に被害が出ており、早期の対策が必要だ」との声が相次いでいる。
一方で、天然記念物である奈良の鹿は行政や愛護会であっても許可なく保護管理措置を講じることができず、頭数管理の難しさが課題となっている。愛護会の担当者は「遠くへ移動した鹿への対応は我々の管轄外となるが、天然記念物である以上、市民生活との共存点を見つけていくほかない」と苦しい現状を語る。市街地への定着が進む中、保護と生活被害防止をどう両立させるかが、奈良市にとって急務の課題となっている。













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