「踏みつぶすはずの“ゴキブリ”が政権を食い破る」...入試不正と失業が生んだ“若者反乱”

引用:depositphotos*この画像は記事の内容と一切関係ありません
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「米国にいた時、この運動は単なるミーム(ネット上の流行ネタ)に過ぎず、誰も街頭に出ないだろうと言われた。しかし今日、全国から集まった『ゴキブリ』たちがニューデリーを埋め尽くした。皆さんが、死にかけていた民主主義を今日、再び蘇らせた」

若者が主導する新興の政治・社会運動の組織「ゴキブリ人民党(CJP)」の創設者、アビジット・ディプケ氏は20日(現地時間)、インドの首都ニューデリーの集会でこう訴えた。医科大学の入学試験(NEET-UG)の問題の漏洩の事態と、教育の不正や腐敗に怒った数万人の若者が、この日、議会に向けて行進し、警察と衝突した。オンラインの風刺のミームから始まった運動が、全国規模の政治的な抵抗に拡大し、発足3年目を迎えたナレンドラ・モディ政権が、最大の政治的な試練に直面しているとの評価が出ている。

「ゴキブリ人民党」という党名は、5月にインド最高裁判所のスリヤ・カント判事が、若者の失業者や活動家を「ゴキブリ」「社会的な寄生虫」と侮辱的に例えた発言を風刺して生まれた。米国に留学中だった大学院生のディプケ氏のSNSでの風刺から始まったこの運動は、全国の若者を結集させる大衆政治運動へと発展し、第3次モディ政権の国政の運営に、最も強力な障害として浮上している。

催涙弾・ネット遮断にも議会へ…デモ隊と警察が流血の衝突

21日、タイムズ・オブ・インディアなど現地メディアや海外メディアによると、インド当局は、議会のモンスーン会期の開会日に合わせてデモの禁止令(BNSS第163条)を発令し、今回の集会を違法なデモと規定したという。ニューデリー中心部のインターネットを遮断し、主要な道路を封鎖したが、全国から集まったデモ隊は、ジャンタル・マンタル広場から出発し、議会議事堂への進入を試みた。

警察は催涙弾を発射し、警棒を振るうなどして強制排除に乗り出した。これにデモ隊も激しく抵抗し、大規模な衝突が発生した。現地の報道によると、若者のデモ隊数十人が頭部や体に負傷し、警察側も118人が負傷したと発表した。

CJPは、環境・教育活動家のソナム・ワンチュク氏の即時釈放、ダルメンドラ・プラダン教育相の辞任、医大の入学試験の混乱に関連して自ら命を絶った受験生の遺族への1,000万ルピー(約1,690万円)の補償などを要求している。今回のデモの直接的な引き金は、教育相の辞任を要求して21日間ハンガーストライキを続けていたソナム・ワンチュク氏が、警察に強制移送された事件だった。その背景には、昨年から続くNEET試験の問題の漏洩と、再試験の混乱という根本的な不満がある。

「ゴキブリ」を自称する若者たち…試験問題の漏洩・就職難が生んだ怒り

医大の入学試験の公正性が崩れたとの批判が広がるなか、再試験と行政の混乱が繰り返される過程で、わずか37日間で、全国で少なくとも12人の医大の志望者が自ら命を絶った。熾烈な入試の競争のなかで、国家が公正性を保証しなかったとの認識が広がり、若者の怒りは、教育の問題を超え、社会全般の不公正に対する抵抗へと広がっている。

第1野党であるインド国民会議(INC)のラフル・ガンジー代表は「モディ首相は、インド史上最も若者に寄り添わない首相だ」と述べた。その上で、「150件を超える試験問題の漏洩で7,500万人の学生が被害を受けたにもかかわらず、政府は責任者の処罰や大臣を更迭を行うどころか、正義を求める若者に催涙弾と警棒で応えた」と批判した。

爆発的な怒りの背景には、インドの構造的な若者の就職難もある。国際労働機関(ILO)や世界銀行などによると、インドの15〜24歳の若者の失業率は16〜17%程度で、15〜29歳の若年層の全体の失業率も10%前後に達しているという。一部の調査では、25歳以下の大卒者の失業率が40%に達することが明らかになっている。インド政府の公式の労働力調査(PLFS)でも、若者の人口の4人に1人以上が、就業も教育も職業訓練も受けていない、いわゆる「ニート」であることが示されている。

「ミームが現実の政治を揺るがした」…モディ第3次政権の最大の政治的な試練

国際社会は、今回のデモを、単なる教育のデモを超え、若い世代の構造的な不満が爆発した政治的な事件と評価している。

英日刊紙ガーディアンは「オンライン上のウィットに富んだ風刺から始まった運動が、数百万人の怒れる若者を結集させ、モディ政権に対する最も予想外の政治的な脅威に成長した」と評価した。タイムズ・オブ・インディアなど現地のメディアも、今回のデモを「モディ政権の12年間の政権運営のなかで稀に見る大規模な若者の抵抗であり、SNSのミームが現実の政治を揺るがした分岐点だ」と分析した。

武力紛争の位置・事件データ計画(ACLED)のアジア・太平洋の上級分析官のパール・パンディア氏は「今回のデモは、教育システムの失敗を超え、若者の経済的な挫折と将来への不安が結びついた結果だ」とし「政府がデモ隊との対話に乗り出しても、蓄積された若者の不満は、今後モディ政権が直面する最大の政治的な課題になるだろう」と分析した。実際に、デモが行われたこの日、議会の中でも野党の激しい抗議で、モンスーン会期の初日の日程が混乱した。デモの規模が制御できないほど大きくなると、連邦政府はCJPの代表団との公式の面談を提案し、事態の収拾に乗り出したが、教育の不公正と若者の失業をめぐる蓄積された不満が、簡単に収まることは難しいとの見方が強い。

織田昌大
織田昌大

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