
米国・イスラエルとの戦闘が1カ月を超えて継続する中、イランが石油販売収益を倍増させているとの分析が浮上している。ドナルド・トランプ米大統領による極限の軍事的・経済的圧力が、エネルギー市場においては逆にイラン側に有利に働くという、逆説的な状況が生じている。
英誌「ザ・エコノミスト」は29日(現地時間)、半世紀にわたりエネルギーの安定供給を担ってきた中東の産油諸国が、2月28日の開戦以降の生産減により減収を余儀なくされる一方、イランは巨額の利益を享受していると指摘。「イラン政権は戦場では劣勢に立たされる可能性があるものの、エネルギー戦争においては優位性を確保している」と報じた。
同誌の推計によれば、現在イランは1日あたり240万〜280万バレルの原油および石油製品を輸出している。このうち原油は150万〜180万バレルに達し、開戦前である昨年の平均輸出量と同水準、あるいはそれを上回る規模を維持している。一方で国際原油価格は、開戦前の1バレル=70ドル(約1万640円)前後から、現在は100ドル(約1万5200円)を超える高水準で推移。これに連動してイラン産原油の実質的な販売価格も急騰し、収益は倍増したという。
また、イラン産原油は開戦前まで、指標となるブレント原油に対し1バレルあたり18〜24ドル(約2700〜3600円)の大幅なディスカウント(値引き)で取引されていたが、現在はその幅が7〜12ドル(約1000〜1800円)程度に縮小している。
こうした石油収益の大部分は、イスラム革命防衛隊(IRGC)を含む政権中枢へと還流している。長年の国際制裁下にあるイランでは、公式な国営石油会社経由の取引以外に、外務省や警察、シーア派系財団といった政府機関・準公的組織に「販売枠」が割り当てられ、それが闇市場で転売されている実態がある。特に、IRGCの精鋭「コッズ部隊」が原油輸出全体の約25%を直接管理・支配していると指摘されている。
最大の輸出先は依然として中国だ。輸出される原油の90%以上が、山東省などに点在する100カ所以上の独立系製油所、通称「茶壺(ティーポット)」に流入しており、主要な取引先には中国の国有企業も含まれる。
また、戦時下でもイラン政権が揺るがない背景について、「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」は、軍事組織に資本と産業が集中した「利権直結型の軍産複合体」経済を構築しているためだと分析。政権支持層は、資金供給や職務、為替優遇などの既得権益を失うことを恐れ、政権への忠誠を維持している。
国際危機グループ(ICG)のアリ・バエズ上級分析官は、同紙に対し「イランでは数百万人規模の人々が、政権への忠誠の対価として多大な特権を享受している」と指摘。その上で、「利権構造に組み込まれた彼らを政権から離反させるのは、極めて困難な課題だ」と述べ、経済制裁による政権崩壊シナリオの限界を示唆した。














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