
米国の対イラン制裁は、中国の民間製油業者の存在によって事実上骨抜きにされつつある。「ティーポット(teapot)」と呼ばれる中国の中小民間製油業者がイラン産原油を大量に吸収しており、同国の主要な資金源として機能しているとの分析が示されている。
最近、米国はイランの重要な資金源である原油輸出を遮断するため、制裁を一段と強化した。米財務省は、数十億ドル規模のイラン産原油を購入したとして、恒力石化の関連会社を含む製油会社や、関連する海運会社・船舶など約40の事業体を制裁対象に指定した。また、金融機関に対しても、中国の製油会社との取引を支援した場合、制裁対象となり得ると警鐘を鳴らした。
ただし、その効果は限定的だとの指摘もある。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「100社以上の中国のティーポット製油所が、制裁や規制の網をくぐり抜けて独自のエコシステムを築き上げている」と報じた。これらの企業は、イランが輸出する原油の大部分を吸収しているという。このルートを通じてイランに流入する資金は、年間数百億ドル規模に達するとみられる。事実上、米国の監視網を回避する「影の原油ネットワーク」が形成されている格好だ。
中国政府もこれを事実上黙認しているもようだ。中国外務省は、米国の一方的な制裁について「国際法上の根拠がない」と反発し、自国企業を擁護する姿勢を示した。
公式統計上、中国のイラン産原油の輸入量は「ゼロ」とされている。中国税関は2023年以降、関連する輸入を一切報告していない。だが、実際の取引は水面下で続いている。タンカーが位置追跡装置を停止し、公海上で原油を積み替えることで原産地を偽装する「シャドー・トレード(影取引)」が常態化しているとされる。イランのダミー企業や仲介業者が決済過程に関与することで、取引の痕跡が消される仕組みとなっている。
ティーポット製油所は国営企業と異なり、海外資産が少なく、ドルではなく人民元で決済できるため、米国の金融網から排除されても受ける打撃が相対的に小さい。こうした構造のもと、中国は制裁による負担を抑えながらイラン産原油を安定的に確保している。
WSJによると、2025年時点で中国の原油輸入のうち約12%がイラン産と推定されるという。関連する物流網も急速に拡大している。今年初め時点でイラン産原油を密かに輸送しているとみられる船舶は約600隻に達し、約70隻だった2020年末と比べて8倍以上に膨らんだ。
ティーポット製油所の台頭については、意図的な戦略というより「偶然の産物」とみる向きもある。かつて中国政府は中国石油化工集団(シノペック)や中国石油天然ガス集団(CNPC)など国営企業中心に石油精製産業を再編しようとしたが、山東省などを拠点とする民間石油会社は、地方政府の支援や税制優遇を背景に生き残った。その後、2015年に一部の民間石油会社に原油の輸入が認められて市場が開放されたうえ、2018年の米国による対イラン制裁強化が決定的な転機となった。
米国の制裁を警戒した国有企業が取引を控える一方、価格が下落したイラン産原油をティーポット製油所が大量に買い付け始めた。その結果、中国のイラン産原油の輸入量は1日あたり約140万バレルの水準に達し、2倍以上に増加した。制裁対象に挙がった恒力石化も2018年以降、売上高が3倍以上に増え、昨年は約300億ドル(約4兆6,500億円)を記録した。
業界では、制裁の実効性を疑問視する声が強まっている。船舶追跡会社ボルテクサ(Vortexa)のエマ研究員は「制裁市場そのものが拡大し、企業の間で『制裁は思ったほど致命的ではない』との認識が広がり始めた」と述べた。
専門家の間では、現在の構造のもとでイラン産原油の取引を完全に遮断することは事実上不可能だとの見方が強い。取引を阻止するには、大規模な船舶拿捕やエネルギーインフラへの攻撃など、より強硬な措置が必要になるとの指摘も出ている。















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