アメリカ国立科学財団(NSF)の国立太陽観測所(NSO)とニュージャージー工科大学(NJIT)の研究チームが新たに開発した適応光学システムを用いて太陽のコロナを鮮明に撮影したと、科学専門メディア「Space.com」が5月29日(現地時間)に報じた。この研究は5月27日、国際学術誌『ネイチャー』に掲載された。
太陽の最外層大気であるコロナは、極端な高温や激しい噴出、太陽表面から放出される巨大なプラズマフィラメントなどにより、長年にわたり科学者たちの注目を集めてきた。しかし、皆既日食時にしか観測できず、地球大気の影響で不鮮明になるため、これまで詳細な観察が困難だった。

しかし、カリフォルニア南部のビッグベア太陽天文台(BBSO)の1.6mクーデ型太陽望遠鏡(GST)に設置された「コナ(Cona)」という画期的な適応光学システムにより、科学者たちは前例のない太陽の姿を観察できるようになった。

撮影された動画では、降り注ぐコロナレインから、これまで観測できなかったプラズマの流れまで、太陽コロナの最も鮮明な姿が捉えられている。研究チームはプラズマから放出される水素アルファ線を示すため意図的に着色しており、暗い色ほど明るい光を表している。
最も印象的な現象の一つは、細長い冷却プラズマの糸のように見えるコロナレインだ。これはコロナの高温プラズマが冷却・凝縮される際に形成される。地球の雨滴と同様、コロナレインも重力で表面に落下する。ただし地球の雨とは異なり、直線的に落下せず、帯電しているため太陽の磁力線に沿って曲がりながら弧を描き、太陽表面に流れ込む。

そして、「プラズモイド(plasmoid)」と呼ばれる微細構造のプラズマの流れが急速に形成され、崩壊する現象も捉えられた。動画にはプラズモイドが秒速約100kmで太陽を横切る様子が映っている。
さらに、太陽の磁場に従って舞うように形を変え、ねじれる太陽の紅炎も観察された。紅炎は主に水素とヘリウムで構成される高温ガス(プラズマ)が巨大なループ状に集まったものだ。

アメリカ国立科学財団の国立太陽観測所に所属する主任技術者のトーマス・リメレ氏は「新しい適応光学システムにより、1.6mクーデ太陽望遠鏡の理論的限界である63kmの解像度でコロナの特徴を撮影することができる」と述べた。
科学者たちは、この技術をハワイのダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡を含むより大型の太陽望遠鏡にも応用し、太陽外層をさらに詳しく観察できることを期待している。この研究の共同著者であるフィリップ・グッド氏は「これは太陽天文学の新時代の幕開けであり、今後数年から数十年にわたってさらなる発見をもたらすだろう」と語った。