
中国で、羊飼い2人を募集する求人に700人を超える応募者が集まった。冬には気温が氷点下30度を下回ることもある人里離れた草原で働く条件だが、一般的な都市部の仕事より高い給与や住居・食料品の提供に関心が集まったとみられる。今回の現象は、中国の労働市場の不安や長時間労働文化への疲弊を示しているとの分析も出ている。
ロイター通信や英紙ガーディアンなどによると、中国・内モンゴル自治区シリンホト近郊で牧場を運営するズオ・シャオヨンさんは4月末、中国の「SNS」に羊飼いの求人を掲載した。主な仕事は、2,000ヘクタール規模の草原で羊3,000頭を世話することだ。
給与は1人当たり月8,000元(約18万円)と提示された。住居と食料品も提供される。夫婦で採用された場合は、月1万6,000元(約36万円)を受け取ることができる。これは中国の都市部にある民間企業の平均月給、約6,000元(約13万円)を上回る水準だ。
求人は中国の「微博(Weibo)」で数時間のうちに5,900万回の閲覧数を記録した。応募者は700人を超え、上海や重慶など大都市の事務職労働者、工場労働者、大学卒業者などが応募したという。ズオさんは、応募者の半数ほどが1990年代生まれで、10分の1は大学を卒業したばかりの人たちだったと明らかにした。
牧場はモンゴル国境に近い人里離れた地域にある。冬には気温が氷点下30度を下回ることがあり、羊に餌を与えたり、畜舎を掃除したりする仕事もある。ズオさんは「ここでは1年を通じて、ほとんど人に会えない可能性もある」とし、「この仕事は観光ではない」と話した。
海外メディアは、今回の求人への反応が中国の就職難を示す一例だと分析している。中国の公式失業率は5%をやや上回る水準だが、不完全雇用や民間部門の賃金停滞が労働市場の不安を高めているという。今夏には過去最多となる1,270万人の大学卒業者が労働市場に入る予定だ。
長時間労働文化への疲弊も背景にあるとみられる。中国では、午前9時から午後9時まで週6日働く、いわゆる「996」勤務が依然として問題視されている。ガーディアンは、海上コンテナ工場で働く21歳の男性が過度な仕事の負担に疲れ、羊飼いの仕事に応募したと伝えた。電子商取引業界で働く28歳の女性も、都市生活から離れたいという理由で応募したという。
中国では、企業が35歳以上の求職者を敬遠する現象を指す「35歳の呪い」という表現も使われている。今回の応募者に1990年代生まれが多かったことも、雇用不安と無関係ではないとの見方が出ている。
夫婦での応募者を優先したい意向を示していたズオさんは、最終的に牧場勤務の経験がある1980年代生まれの夫婦2組を採用した。ズオさんは「ここまで話題になるとは思わなかった」とし、「普通の人たちが仕事を見つけるのに苦労しているのだと思う」と語った。













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