
ブタの腎臓2個と肝臓1個が、1人の人間に同時移植された。動物の単一臓器を人間に移植した例はこれまでにもあったが、複数の臓器を同時に移植したのは今回が世界初となる。
中国・広西医科大学第二附属病院のスン・シューヨン教授らの研究チームは、53歳の脳死患者にブタの臓器3つを同時移植する異種移植手術を実施し、その研究成果を30日、国際学術誌『Med』に発表した。異種移植とは、動物の臓器や組織などを人間に移植する医療技術を指す。
これまでにもブタの心臓、腎臓、肝臓、肺などをそれぞれ人間に移植した例はあったが、複数の臓器を同時に移植したのは今回が初めてである。特に、これまでのブタ肝臓移植は肝臓の一部を移植するにとどまっていたのに対し、今回の研究では肝臓全体を移植した点が大きな違いとなっている。
移植を受けた患者は慢性腎疾患を患っており、脳出血によって脳死状態に至っていた。脳死患者を対象としていることから、臨床試験というよりは研究目的の移植に近いものと考えられる。
脳死患者の腎臓はすでに機能していなかったが、肝臓は正常な状態だった。研究チームは脳死患者の肝臓を肝疾患患者に提供し、その代わりに脳死患者へブタの腎臓と肝臓を移植した。
研究チームは、移植拒絶反応に関与するブタの遺伝子3つを除去し、さらに血液凝固の問題を軽減するためにヒトの遺伝子3つを導入した。こうして計6か所の遺伝子改変が施されたブタの臓器が手術に用いられた。
移植手術から19時間後、移植されたブタの肝臓から胆汁が分泌されていることが確認された。また、患者のクレアチニン値および尿素値が正常範囲まで回復し、移植された腎臓も正常に機能していることが示された。クレアチニン値と尿素値は、腎臓が老廃物をどの程度ろ過できているかを評価する血液検査の指標である。
2024年に世界で初めて生存者へのブタ腎臓移植を実施したレオナルド・V・リエラ教授は29日(現地時間)、国際学術誌『Nature』に対し、「複数の臓器を同時に移植するのは、単一臓器の移植よりもはるかに複雑で、副作用のリスクも高い」としたうえで、「腎臓と肝臓を同時に移植する複合手術は、今回が唯一無二の事例だ」と述べた。
手術から36時間後には、移植されたブタの臓器に対する拒絶反応の兆候が確認された。肝臓や腎臓に存在していたブタ由来の細胞が、人間の細胞へ置き換わり始めていたのである。これは患者の免疫系がブタの臓器を異物として認識したことを意味する。また、移植された肝臓の一部組織に壊死が生じたり、局所的な血液凝固が起きたりする変化も観察された。
さらに研究チームは、移植臓器内で免疫細胞の一種である「S100A12+」の値が上昇していることも確認した。今後、S100A12+を抑制する薬剤を使用すれば、移植拒絶反応を軽減できる可能性があるとしている。
複数の臓器を同時に移植する多臓器移植は、人間の臓器を用いてすでに実施されているが、提供臓器が不足しているという問題がある。ブタの臓器を利用した多臓器異種移植が成功すれば、移植の機会を得られないまま亡くなる患者を減らせる可能性が期待される。
ただし、多臓器異種移植は極めて複雑でリスクも高いため、近い将来に一般的な医療として普及するのは難しいとみられている。













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