
バイトダンスの映像生成AI「SeaDance 2.0」公開、無断学習の懸念浮上
「写真の中のキャラクターが上海の東方明珠塔の横で格闘する映像を制作して。スタイルは映画『トランスフォーマー』を参考に、ダイナミックなエネルギーを強調してほしい」
中国の有名コーヒーチェーン「蜜雪氷城(MIXUE)」のマスコットと、スターバックスのエプロンを着用したロボットの写真2枚、そしてこの簡潔な指示を入力すると、驚くべき光景が展開された。わずか3分後、東方明珠塔が崩壊し、雪だるまが結界を放つ20秒の高解像度アニメーションが生成された。別途の画面転換や詳細な指示がないにもかかわらず、大作映画のようなリアルな演出が実現されており、短いバージョンであれば1分以内での生成も可能だとしている。
「SeaDance 2.0」の登場と驚異的な性能
2月9日、中国の著名なテクノロジー系インフルエンサーであるティム(Tim、潘天鴻)氏は、バイトダンス(ByteDance)の新映像AIモデル「SeaDance 2.0」の体験記を公開し、「業界の流れを変える存在だ」と感嘆した。「SeaDance 2.0」は、昨年6月にバージョン1.0が発表されてから8ヶ月ぶりの意欲作である。2K解像度の生成をサポートし、口の動きに合わせた自然な音声を生成する「ナラティブオーディオ」機能を搭載したほか、制作速度を従来比で30%短縮するなど、飛躍的な進歩を遂げた。
しかし、ティム氏は感嘆と同時に、映像内で「恐ろしい」という表現を6回も繰り返した。その理由は、AIがユーザーの許可なく個人情報を無断学習した兆候が捉えられたことに他ならない。実際にティム氏が自身の写真と簡単なプロンプトを入力したところ、音声データを提供していないにもかかわらず、本人の実際の声がそのまま再現された。さらに、写真には写っていない同氏の本社ビルの裏側の構造まで正確に描写されたという。
無断学習の抑止策、法的根拠の欠如
業界では、バイトダンスが「抖音(ドウイン、中国版TikTok)」の膨大な利用者データを無断学習した可能性が高いとみている。ティム氏も1,000万人以上のフォロワーを持つ「網紅(ワンホン)」であり、「抖音」にアップロードした動画は428本に達する。同氏は「自身の動画を基に広範な学習が行われたことを示している」と指摘し、著作権利用について事前の連絡は一切なかったと強調した。
問題は現在、このような無断学習を防ぐ法的根拠がほとんど存在しない点にある。現行の「抖音」の利用規約には、利用者がアップロードしたコンテンツを研究開発(R&D)やマーケティング目的で全世界において無料で使用できると規定されているためだ。
著作権の空白を原動力とする中国AIの躍進
中国は、こうした著作権制度の空白を原動力として、映像AI分野でアメリカを急速に追い上げている。映像AI分野で首位級と評価される「Kling AI」の親会社、快手(クアイショウ)も、アップロードされたコンテンツをAI学習に活用できる旨を利用規約に明記している。また、中国当局は核心的な公共データをAI学習用に開放する指針を施行し、技術覇権の確保を加速させている。北京インターネット裁判所も、利用者が十分な努力を払った場合にはAI生成物にも著作権を認めるという判決を下し、企業がより積極的に開発に乗り出す根拠を提供した。
このような状況は、AI著作権問題を巡る訴訟が絶えないアメリカやヨーロッパとは対照的である。実際に「OpenAI」や「Google」などは無断学習への批判に直面し、著作権者がデータ使用を拒否できるガイドラインを整備するほか、当局の捜査を受けるなど規制の壁に突き当たっている。アメリカ・ワシントンのシンクタンク「ウィルソン・センター」は、欧米が規制に注力する間に、中国は制限のないデータアクセスを活用して「非対称的優位」を構築していると警告した。
なお、バイトダンスのリスク管理チームは、実在の人物の画像や動画を参考資料としてアップロードすることを一時的に停止するなどの緊急措置を講じているが、高度なリアリズムがもたらす倫理的懸念は払拭されていない。













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