
中東情勢による国際原油価格の急騰で、庶民の憩いの場である「町の銭湯」が大きな打撃を受けている。数十年にわたり地域住民に愛されてきた老舗が燃料費の負担で廃業を決め、何とか経営を維持しようと利用客に細かいルールを設ける所も出てきた。
京都市北区小山西元町の銭湯「加茂湯」には最近、節水を呼びかける案内が掲示された。髪を洗ったり歯を磨いたりする際にシャワーを出しっぱなしにすることや、お湯を流し続ける行為、浴槽の水を過度にくみ出す行為は、燃料費の急騰により営業に影響が出るため控えてほしいという内容だ。
昨年4月、京都府は物価高騰の影響を考慮し、公衆浴場の入浴料金の上限を550円(大人)に改定した。しかし、先月末に米国、イスラエルとイランの戦闘が勃発したことで、銭湯経営はさらなる危機に追い込まれている。
加茂湯では多くの銭湯と同様、客がお湯を使った分だけ浴槽に水が自動的に補充され、重油ボイラーで加温する方式を採用している。そのため、使用量を抑えればボイラーの稼働回数も減り、燃料費の削減に直結するという。
加茂湯を経営する40代の店主は、21日に自身のSNS(旧ツイッター)で「これまで長時間でなければ出しっぱなしも気に留めなかったが、背に腹は代えられない状況だ」と明かし、「お湯は限りある資源。利用客の小さな配慮が、すべての銭湯経営者にとって大きな支えになる」と訴えた。
産経新聞によると、地域の銭湯経営者たちは最近、燃料取引業者から重油価格を1リットル当たり70円から100円に引き上げるとの通知を受けたという。戦争の影響により、わずか1カ月の間に燃料費が約4割も急騰した計算だ。
問題は、急騰するコストを入浴料金に反映させにくい構造にある。日本の大衆銭湯は生活必需施設である「一般公衆浴場」に分類され、自治体が定めた料金上限を遵守しなければならない。例えば、京都や大阪では大人1人当たり520円〜550円程度の上限が設定されている。このため、店主たちは営業時間を短縮したり、休業を余儀なくされたりしている。
全国の銭湯巡りが趣味だという20代の会社員は「地域に愛される古い銭湯がなくなるのは寂しい」と話し、「一人暮らしでは湯船に浸かる機会が少ない。気軽に入れる銭湯は心の支えなので、地域施設として残ってほしい」と語った。
50年続く老舗銭湯も歴史の中へ
燃料費の負担が長期化する中、各地の老舗が廃業の危機に瀕している。テレビ朝日などの報道によると、静岡県富士市の老舗銭湯「富士見湯」は前例のない経営難に直面している。ボイラー燃料の重油価格が今月に入り、1リットル当たり100円から130円へと3割も急騰したためだ。
富士見湯の吉川隆之社長は「重油は銭湯の心臓であり血液。高値が続けば年間の燃料費負担は60万円以上増える見通しだ」と嘆く。現在、静岡県の入浴料上限は520円だが、同店では500円に据え置いている。コスト上昇分を考慮すれば650円程度への引き上げが必要だが、常連客を失うことを恐れ、踏み切れないという。
経営の限界に達し、幕を下ろす銭湯も増えている。1968年に創業し、1日200人以上の利用客が訪れていた青森市の「桂木温泉」は、5月31日をもって58年の歴史に幕を閉じることになった。
同温泉の山口昌良社長は「3月に入り、業者から毎週のように値上げの通知が届いている」と述べ、「何とか耐えてきたが、現実的にもう限界だ」と語った。40年以上通い続けたという常連客は「長い間親しんできた場所がなくなるのは本当に残念」と肩を落としていた。
地政学的リスクによるエネルギー価格の不安定化が、日本の地域社会に根付いた文化を脅かしている。













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