G580の販売台数はわずか1,450台
「G」の栄光はどこへ
メルセデスの「リトルG」、電動化戦略を見直しか

伝説的オフローダーとして知られるメルセデス・ベンツ Gクラスの電気自動車バージョン「G580」が、期待を大きく下回る販売実績となったことで、その背景と今後の戦略転換に注目が集まっている。2023年に登場したG580 with EQテクノロジーは、発売からわずか1年で主要市場において深刻な不振に直面している。
2024年4月末時点での世界販売台数はわずか1,450台にとどまり、EV市場において期待外れの反応となった。なお、同じGクラスの内燃機関モデルは9,700台が販売されており、G580はその約7分の1という結果に終わっている。


重すぎる車体と短すぎる航続距離
実用性に課題
G580は非常に高価でありながら、牽引装置には対応しておらず、最大積載量はわずか415kg。一方で車両重量は3,085kgに達する。実用性に欠ける点が多く、特に385kmという短い航続距離は、購入をためらう大きな要因とされている。
さらに、ブランドの象徴でもあるオフロード性能が期待に応えられていないとの指摘もある。これらの要素を受け、メルセデス・ベンツは「リトルG」と呼ばれる小型Gクラスの電動化計画について見直しを進めている。もともとはEV専用車として開発が進められていたが、現時点では内燃機関搭載モデルの導入も検討されているという。


2,635万円の高価格
消費者との意識差が浮き彫りに
G580の価格は2,635万円とされており、Gクラスの象徴性を加味しても高額である。この価格帯のEVという点に、多くの消費者が慎重な姿勢を見せている。
高級車のユーザー層は今もなお、内燃機関車のもたらすパワーやエンジンサウンドに強い愛着を持っており、G580はその点で「Gクラスらしさ」を十分に伝えることができなかった。結果的に、従来のG550やメルセデスAMGモデルに魅力を感じる消費者が多くを占めている。


電動化戦略にスピード調整
G580販売不振が象徴する変化
ベンツは2024年初頭、電気自動車市場に予想外の減速傾向が見られたことを受け、電動化戦略においてスピード調整が必要であると認識を示していた。G580の販売不振は、そうした方向転換を裏付ける象徴的な出来事だと言える。現在開発中の小型Gクラスは、MMAプラットフォームを採用し、電動パワートレインに加えて内燃機関やハイブリッドにも対応可能な設計へと見直されている。
そもそもGクラスは、単なるSUVではない。軍用車をルーツに持ち、力強いエンジン音とオフロードを含む自由な走破性、そして長年の歴史が織りなす「象徴性」に価値があるモデルだ。しかしG580は静かで重く、その感性を伝えるには至らなかった。そのことが今回の結果を導いた要因とされている。